「なんだか疲れやすくなった」「年々体力が落ちていく」など、疲れやすさを自覚している方は多いと思います。ですが、そもそも疲れとは何でしょう?そこで、疲労研究家で、大阪市大学大学院疲労医学講座特任教授である梶本修身先生に、最新の疲労科学研究で分かった、疲労の正体とともに、疲労を改善する生活習慣について伺ってみました。
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「疲れやすくなった」「年々体力が落ちていく」など、疲れやすさを自覚している方は多いと 思います。では、その疲れの原因は、どこにあるのでしょう?
「例えば、ウオーキングをした後には、体が疲れたと感じます。ですが、炎天下で歩くのと、 涼しい快適な環境で同じ距離を歩くのとでは、運動後の疲れに大きな差が生じることは誰しも理解できることでしょう。つまり、同じ運動量で同じように体を使っても、環境や条件によって疲れの感じ方は大きく異なります。運動によって心拍数を上げ、呼吸を速め、汗を発生させるのは、脳の司令塔となる自律神経です。この自律神経に負荷がかかることで起きる脳疲労こそが、日常的に感じる疲れの正体です」。
家事や仕事、社会活動などの場においても同様で、 無理に活動を続けると、疲労は体ではなく、脳にたまることが分かっています。
では、体が疲れたと感じるのはどうしてなのでしょうか?
「疲労を起こすのは自律神経の中枢ですが、その情報をキャッチして"疲労感"として自覚さ せるのは、眼窩前頭野(がんかぜんとうや) という部位です。自律神経の中枢が疲れると、眼窩前頭野にシグナルを送り、これ以上活動しないように、体が疲れていると勘違いさせます。これが疲労感の正体。つまり、疲労感とは、命を守るための防御機能です」
疲れにくい体を作るためには、 脳を疲れさせないことが重要です。
「脳の疲労を取る唯一の方法は、睡眠です。同時に、日常生活のちょっとした工夫で疲れ にくい環境を整えることができます」と、梶本先生。次の記事では、疲れのメカニズムと正しい疲労対策法をさらに詳しくお伺いします。
取材・文/笑(寳田真由美)
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梶本修身(かじもと・おさみ)先生
東京疲労・ 睡眠クリニック院長、医師・ 医学博士。大阪市立大学 大学院疲労医学講座特任教授。「産官学連携疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。著書の『すべての疲労は脳が原因』(集英社)は、 シリーズ累計18万部を超えるベストセラー。