「なんだか疲れやすくなった」「年々体力が落ちていく」など、疲れやすさを自覚している方は多いと思います。ですが、そもそも疲れとは何でしょう?そこで、疲労研究家で、大阪市大学大学院疲労医学講座特任教授である梶本修身先生に、最新の疲労科学研究で分かった、疲労の正体とともに、疲労を改善する生活習慣について伺ってみました。
疲労対策と思っていた行動が、実は疲れの原因に!?
「疲れにくい体を作るため、毎日ランニングをする」「サウナで汗をかく」「疲れるのが嫌だから、ソファに長時間座って体を休める」...これらは、どれも間違った疲労対策だと聞いたら、 いかがでしょうか? 私たちが思い込んでいる疲労や疲労対策には、実は根拠のないものが多くあります。
まずは、私たちが正しいと思い込みがちな疲労対策について見直してみましょう。
●最新科学で分かった! 間違いだらけの疲労対策
(1) 運動すると、 疲労物質の乳酸が体にたまるから疲れを感じる
→間違い!
従来、運動をすると乳酸がたまり肉体的な疲労が起こるといわれていましたが、乳酸は疲労物質ではないと分かっています。むしろ、壊れた筋細胞を修復する働きがあり、脳で栄養源にもなります。
(2) 疲労を感じたら栄養ドリンクを飲んで元気を回復させる!
→間違い!
栄養ドリンクに疲労回復効果は期待できません。 多くは覚醒作用のあるカフェインを含み、眠気を解消します。また、微量のアルコールを含む場合は気分を高揚させ、疲労感を吹き飛ばしますが、 疲労そのものを回復させるわけではありません。
(3) 早寝・早起きは、健康のために欠かせない良い習慣!
→間違い!
年齢を重ねるほど早起きが危険に。特に寒い日の朝は心筋梗塞や転倒などのリスクが増します。布団の中でごろごろしたり、体を伸ばしたりすると、 血流が良くなり、自然と自律神経が目覚めます。
(4) 体を休ませるため動き回るのを控えて、 長時間、ソファに座る
→間違い!
柔らかなソファは不自然な体勢になりやすく、腰や首を痛めやすくなります。また、座ると腰が沈み込んでしまう場合は、腰を強く圧迫し、血流を悪くして、余計な疲れを生みやすくなります。
取材・文/笑(寳田真由美) イラスト/黒崎 玄
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梶本修身(かじもと・おさみ)先生
東京疲労・ 睡眠クリニック院長、医師・ 医学博士。大阪市立大学 大学院疲労医学講座特任教授。「産官学連携疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。著書の『すべての疲労は脳が原因』(集英社)は、 シリーズ累計18万部を超えるベストセラー。