腰痛は多くの日本人を悩ませている病気で、その有訴者率(自覚症状のある人の割合)は男性で1位、女性で2位を占め、年齢が高いほど有訴者率も上がります(平成25年国民生活基礎調査)。それほど腰痛は身近な悩みなのです。
ヨーロッパでは"魔女の一撃"と言われる「ぎっくり腰」。個人差はありますが、何かの拍子で腰に"グキッ"とした痛みが走り、直後は日常生活もままならないことも。
この痛み、どのように対処したらいいのでしょう。予防法はあるのでしょうか。そこで日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科名誉指導医でもある東京都立多摩総合医療センター院長の近藤泰児先生にお話を伺いました。
前の記事「体幹トレーニングでバランス力をアップ~ぎっくり腰予防法【2】/ぎっくり腰(9)」はこちら。
インナーマッスルが刺激されます
ぎっくり腰は、腰の椎間板(ついかんばん)、椎間関節、筋肉、靭帯などの損傷が原因で起きます。そのため腰痛予防には立つ、歩く、走るなどの日常生活の能力をバランスよく向上させることが大切です。個々の筋肉はそれぞれ連動しているので、一部の筋肉を鍛えるより「体幹筋」を鍛え、それをバランスよく働かせる神経系の働きや股関節などの柔軟性を高める方法が有効です。
そこでおすすめなのが、バランスボールです。
バランスボールの上に座ると体が不安定な状態になり、倒れないためにバランスを取ろうとします。そのときに背骨や骨盤周りの筋肉の中でも姿勢・動作の調節に関与しているインナーマッスル(体の深部にある筋肉)が特に刺激されるので、座っているだけでもトレーニングになります。体幹・骨盤周辺のインナーマッスルの強化は、スポーツパフォーマンスを向上させるだけでなく、腰痛予防にも有効なので、バランスボールを利用したトレーニングをぜひ始めてみてください。
慣れてきたら、座った状態から両手を離したり、片足を床から持ち上げたりして、徐々に難しい練習もしてみましょう。その他にもバランスボールを利用した様々なトレーニングがありますが、いずれも腰を支えるうえで重要なインナーマッスルの強化に有効です。
次の記事「間違えると筋力が低下することも!コルセットの正しい使い方/ぎっくり腰(11)」はこちら。
取材・文/ほなみかおり
近藤泰児(こんどう・たいじ)先生
東京都立多摩総合医療センター院長、日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科名誉指導医、日本整形外科学会認定専門医・認定脊椎脊髄病医。1979年東京大学医学部卒業。都立駒込病院整形外科骨軟部腫瘍外科部長、東京都立府中病院(当時)副院長などを経て、2013年より現職。著書に『腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症 正しい治療がわかる本』(法研)、『わかる!治す!防ぐ! いちばんやさしい腰痛の教科書』(アーク出版)など。