大人世代の肩の痛みは「五十肩」と思いがち。しかし、それは50歳以上の4人に1人が発症するという「肩の腱板断裂」かもしれません。今回はこの症状と予防策について、医学博士の森原徹さんにお話を伺いました。
この記事は月刊誌『毎日が発見』2023年10月号に掲載の情報です。
主な症状
・腕は上がるが、上げ下げの途中が痛い
・ 夜間、眠れないほど痛い
・ 肩の可動域が狭く、腕が上がりにくい
・ 腕を上げ下げする際、「ゴリゴリ」などとこすれるような音がする
腱板断裂はここで起こる
腱板断裂とは
加齢や使い過ぎなどで腱板が弱ったり、けがなどが原因で腱板が切れる。構造上、腕の骨の上部分につく、「棘上筋」が最も断裂を起こしやすい。利き手に多い。
腱板とは
上腕骨と肩甲骨の間には4つのインナーマッスル(深いところにある筋肉)があり、骨につくところで硬い腱に変わる。その腱が集まって板状に広がっているため、「腱板」と呼ばれている。
肩にはインナーマッスル(深いところにある筋肉)があり、肩関節を安定させ、動かすための役割を担っています。
この筋肉が骨につくところで固い腱に変わり、「腱板」を構成しています。
「腱板断裂」とは、加齢や使い過ぎ、骨とのこすれなどが原因で弱った腱板が、切れてしまった状態をいいます。
腕を上げるときに力が入らなくなるので、着替えや家事といった日常生活や、スポーツなどに支障を来します。
一方、症状の出ない人もいます。
五十肩と似た症状なので、自然に治ると思って放置する人も少なくありませんが、一度切れた腱板は元には戻りません。
放置すると悪化しやすいので、早期の診断と適切な治療が大切です。
診断はエコーやMRI検査によって行われます。
X線検査では腱板は写りません。
X線検査のみ行い、正しく診断できていないケースもあるので、患者側から医師への働きかけも大切です。
治療では、薬物療法と運動療法が行われます。
服薬、貼り薬、注射で痛みを抑え、1~2週間安静にします。
その後、理学・作業療法士らの指導の下、残存している腱板の機能を高める運動療法を繰り返し、肩の動きを回復させます。
運動療法を3カ月間ほど続けても痛みが消えず、可動域も広がらない場合は手術を検討します。
多くは、内視鏡を使った手術で、肩に小さな穴を数カ所開けて、断裂した腱板と上腕骨を糸で縫合する、体に負担の少ないものです。
骨には糸のついたねじの「アンカー」を埋め込みます。
手術後は肩を一定期間固定した後、運動療法を行います。
日常生活への復帰の目安は3~5カ月程度です。
予防のためには、重い物を持つときは脇を締めて、重さをひじに分散させるなど、日頃から肩に過剰な負担をかけないことも大切です。