50歳以上の4人に1人が発症! 五十肩と間違えやすい「肩の腱板断裂」【専門医・森原先生が解説】

大人世代の肩の痛みは「五十肩」と思いがち。しかし、それは50歳以上の4人に1人が発症するという「肩の腱板断裂」かもしれません。今回はこの症状と予防策について、医学博士の森原徹さんにお話を伺いました。

この記事は月刊誌『毎日が発見』2023年10月号に掲載の情報です。

主な症状
・腕は上がるが、上げ下げの途中が痛い
・ 夜間、眠れないほど痛い
・ 肩の可動域が狭く、腕が上がりにくい
・ 腕を上げ下げする際、「ゴリゴリ」などとこすれるような音がする

腱板断裂はここで起こる

50歳以上の4人に1人が発症! 五十肩と間違えやすい「肩の腱板断裂」【専門医・森原先生が解説】 2310_P074-075_01.jpg腱板断裂とは

加齢や使い過ぎなどで腱板が弱ったり、けがなどが原因で腱板が切れる。構造上、腕の骨の上部分につく、「棘上筋」が最も断裂を起こしやすい。利き手に多い。

50歳以上の4人に1人が発症! 五十肩と間違えやすい「肩の腱板断裂」【専門医・森原先生が解説】 2310_P074-075_02.jpg

腱板とは

上腕骨と肩甲骨の間には4つのインナーマッスル(深いところにある筋肉)があり、骨につくところで硬い腱に変わる。その腱が集まって板状に広がっているため、「腱板」と呼ばれている。


肩にはインナーマッスル(深いところにある筋肉)があり、肩関節を安定させ、動かすための役割を担っています。

この筋肉が骨につくところで固い腱に変わり、「腱板」を構成しています。

「腱板断裂」とは、加齢や使い過ぎ、骨とのこすれなどが原因で弱った腱板が、切れてしまった状態をいいます。

腕を上げるときに力が入らなくなるので、着替えや家事といった日常生活や、スポーツなどに支障を来します。

一方、症状の出ない人もいます。

五十肩と似た症状なので、自然に治ると思って放置する人も少なくありませんが、一度切れた腱板は元には戻りません。

放置すると悪化しやすいので、早期の診断と適切な治療が大切です。

診断はエコーやMRI検査によって行われます。

X線検査では腱板は写りません。

X線検査のみ行い、正しく診断できていないケースもあるので、患者側から医師への働きかけも大切です。

治療では、薬物療法と運動療法が行われます。

服薬、貼り薬、注射で痛みを抑え、1~2週間安静にします。

その後、理学・作業療法士らの指導の下、残存している腱板の機能を高める運動療法を繰り返し、肩の動きを回復させます。

運動療法を3カ月間ほど続けても痛みが消えず、可動域も広がらない場合は手術を検討します。

多くは、内視鏡を使った手術で、肩に小さな穴を数カ所開けて、断裂した腱板と上腕骨を糸で縫合する、体に負担の少ないものです。

骨には糸のついたねじの「アンカー」を埋め込みます。

手術後は肩を一定期間固定した後、運動療法を行います。

日常生活への復帰の目安は3~5カ月程度です。

予防のためには、重い物を持つときは脇を締めて、重さをひじに分散させるなど、日頃から肩に過剰な負担をかけないことも大切です。

 

<教えてくれた人>

丸太町リハビリテーションクリニック 院長
森原 徹(もりはら・とおる)先生

京都府立医科大学整形外科学教室臨床教授・客員講師及び認定NPO法人京都運動器障害予防研究会副理事長を兼任。京都府立医科大学卒業、医学博士。同大学肩・肘関節疾患治療のチーフを経て2019年より現職。

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