白癬菌というカビ(真菌)の一種が足に繁殖して起こる足白癬。「水虫」と聞くと、かゆみが伴うものと思いがちですが、必ずしもそうではないのだとか。今回は、埼玉医科大学 皮膚科教授の常深祐一郎(つねみ・ゆういちろう)先生に「足白癬(水虫)」についてお聞きしました。
じつはかゆみがないことも多い
根気よく治療することが重要
足白癬(水虫)
主な種類
・趾間型(足の指の間)
・小水疱型
・角質増殖型
・爪白癬
主な治療法
・抗真菌薬による薬物療法
・日常生活の改善
主な種類と症状
趾間型
爪白癬
小水疱型
角質増殖型
※足白癬や爪白癬から、全身に広がる恐れがある
足白癬(水虫)とはカビ(真菌)の一種である白癬菌が足に繁殖して起こる皮膚の病気です。
白癬菌は全身に感染しますが、9割近くは足に感染します。
靴を履くために足が蒸れ、菌にとって過ごしやすい高温多湿な環境があるからです。
白癬菌は、家庭以外にジムや温泉などの公共施設にも例外なく落ちているので、日常生活上、接触は避けられません。
ただ、付着しても感染までに約1日かかるので、白癬菌が皮膚の角質の中に入る前に、足を洗うなどこまめに除去することが重要です。
足白癬はかゆみがあるものと多くの方が思っていますが、大半はかゆみを伴いません。
診断のためには、皮膚の角質を採取し、顕微鏡で白癬菌の有無を調べます。
自己判断で市販薬を試すことは避けます。
正しい診断を妨げる上、他の皮膚病の場合、悪化する恐れもあります。
まずは皮膚科を受診してください。
治療の基本は「抗真菌薬」の外用薬を1日1回塗ることです。
白癬菌を休止状態にして、皮膚の入れ替わりに合わせて、菌を押し出すことを目指します。
症状がなくなっても菌が残っている恐れがあるので、途中でやめてはいけません。
厄介なのは、爪白癬です。
歩行時の痛みや皮膚に食い込んで細菌感染症を招く他、歩行に支障を来し、転倒して寝たきりになる恐れもあります。
治療の基本は経口の抗真菌薬です。
塗り薬は有効成分が爪の下まで届きにくい上、高齢になるほど爪の成長が遅いため、治療に時間がかかることもあります。
爪白癬は白癬菌の温床となり、何度も足白癬を繰り返す他、そこから顔や体に増殖することもあります。
足白癬を放置して爪に感染させる前にきちんと完治させておくことが重要です。
市販薬は、必要量を塗ると高額になるので、通院できないときのつなぎに利用する程度にとどめましょう。
足白癬はどうやって起こる?
皮膚の表面にあるだけの状態では、発症はしない。
▼約24時間たつと
白癬菌が角質を食べて、その結果出てきた成分に反応して、症状が出る。かゆみがないことも多い。
薬の塗り方がポイント!
症状が片方の足の指の間だけでも...
↓
症状が現れていない部分にも塗ること!
両方の足の指の間、指の表裏、足の裏全体、アキレス腱の周辺や足の側面にも塗る。
必要な量は?
1カ月にチューブ3本(30g)を使い切るくらいが適正量の目安。
片足につき、人さし指の第一関節分の量(=0. 5g)
期間は?
再発を防ぐためには、きれいになってからも最低でも4週間以上、塗り続ける。
《日常的に気を付けたいこと》
・足は爪の周りと指の間まで洗う
・ゴシゴシ洗い過ぎない(角質層が傷つくと白癬菌が入りやすくなる)
・温泉、ジム、サウナなど素足で利用する施設から帰ったら、すぐに足を洗う
・長い時間、靴を履き続けないようにする(職場では通気性のよいサンダルに履き替えるなど)なるべく靴は毎日履き替えて、靴を乾燥させる
・バスマット、スリッパなどは共有しない、こまめに洗う
・部屋はこまめに掃除して清潔に保つ
・玄関マットやバスマットはこまめに日干しをする
取材・文/古谷玲子 イラスト/片岡圭子