発症すると、チクチクする痛みや患部が熱くなったりして横になって寝るのもつらいのが、帯状疱疹(たいじょうほうしん)。後遺症に悩む人も多く、高齢になると罹患しやすいのが特徴です。今回は帯状疱疹やアトピー性皮膚を専門とする、本田まりこ先生にお話を伺いました。
この記事は月刊誌『毎日が発見』2023年9月号に掲載の情報です。
<予防法>
50歳以上 はワクチンを接種しましょう
痛みを伴う帯状の疱疹
ワクチンと早期受診がカギ
「帯状疱疹」はウイルスによって帯のように疱疹(水ぶくれなどの皮膚症状)が広がる病気で、疱疹の発症前後に痛みを伴うのが特徴です。
高齢になるほど罹患(りかん)しやすく、50代以降に急増し、60~70代の発症が最も多い病気です。
皮膚の症状が治っても痛みだけが続く後遺症「帯状疱疹後神経痛」に悩む人も多くいます。
帯状疱疹と後遺症を防ぐには「ワクチンの接種と早期の治療が重要です」と、本田まりこ先生は話しています。
50歳を過ぎると接種できる2種類のワクチン
帯状疱疹とその後遺症「帯状疱疹後神経痛」を防ぐ最も有効な方法は、50歳から受けられるワクチンの予防接種です。
2種類があり、「2回接種のシングリックス(※)は高額ですが、帯状疱疹、後遺症ともに発症予防効果は非常に高いです。1回接種の水痘ワクチンは予防効果は約5割ですが、1回では免疫がつかない人もおり、2回接種することもあります」と、本田先生。
水痘ワクチンは弱毒化した生きたウイルスを体内に入れるため、免疫不全を招く病気がある人や免疫を抑える治療をしている人への接種は禁じられているそうです。
自分の健康状態や費用などを考慮し、医師と相談して選びましょう。
皮膚科や内科などで接種できますが、扱っていない医療機関もあるので事前の確認は必須。
また、自治体によっては費用の一部を助成するところもあります。
※シングリックスは、2023年6月26日付で帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18 歳以上の人も接種可能になりました。
ワクチンは2種類
予防効果が高い。価格は高め
シングリックス(不活化ワクチン)
2020年から接種できるようになった、帯状疱疹予防専門のワクチン。水ぼうそうの予防効果はありませんが、帯状疱疹の予防には非常に高い効果を得られます。
●効果 帯状疱疹の発症は97%減少(※1)、帯状疱疹後神経痛の移行は89%減少(※2)
●費用 約5万円(2回分合計)
●接種回数 2回(2カ月後に2回目)
●効果の持続期間 9年以上
●接種方法 筋肉注射
●接種時の痛み 強め
●副反応 疼痛、発赤、はれ、発熱、筋肉痛などが出ることがある
※1 Lal H, et al., N Engl J Med, 2015による
※2 Cunningham AL, et al., N Engl J Med, 2015による
予防効果は約5割。価格は安め
水痘ワクチン(生ワクチン)
水ぼうそう予防用のワクチン。過去に水ぼうそうにかかったことがある人が接種すると、体内にすでにある程度持っている水ぼうそうウイルスに対する免疫力を高めます。
●効果 帯状疱疹の発症は51%減少(※3)、帯状疱疹後神経痛の移行は67%減少(※4)
●費用 約1万円
●接種回数 1回(免疫の状態により追加する場合がある)
●効果の持続期間 約3~11年(※4)
●接種方法 皮下注射
●接種時の痛み 中くらい
●副反応 軽い疼痛などが出ることがある
※3 国立感染症研究所「帯状疱疹ワクチン ファクトシート」による
※4 Cook SJ, et al., Clin Ther 37,2015による
予防のための生活習慣
ストレスをためない
帯状疱疹とその後遺症の発症、悪化にはストレスや過労、免疫力の低下が大きく関わっています。生活のペースを見直し、気分転換できる趣味などを楽しみながら、ストレスの少ない生活を送るようにするのが理想です。悲観的に考え過ぎないことも大切です。
3食規則正しく、栄養をきちんと取る
栄養不足は免疫力低下を招くので要注意。決まった時間に食事を取ると、自律神経が整い、免疫力を高める効果があります。罹患したら、傷ついた皮膚や神経の修復を促すために、良質のたんぱく質、ビタミンやミネラルなどをバランスよく摂りましょう。
構成・取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/ノグチユミコ