80歳までに日本人の3人に1人が発症する帯状疱疹。中でも猛暑から体調不良に陥り、免疫力が低下しやすい夏に発症が多くなります。今回は、東邦大学医療センター大橋病院 麻酔科 客員教授の青山幸生(あおやま・ゆきお)先生に「帯状疱疹の発症の仕組みや痛み」についてお聞きしました。
どんな病気?
・80歳までに日本人の3人に1人が発症する
・水痘・帯状疱疹ウイルスによって発症する
・神経に沿って赤い発疹が帯状に広がり、水ぶくれになる
・痛みを伴う発疹が3週間程度続く
・50代以降の約2割の人は帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行してしまう
・合併症として角膜炎、結膜炎、顔面神経麻痺、難聴などが起こることも
過去に水ぼうそうになった経験がある人で、夏バテなどで免疫力が低下すると帯状疱疹を発症しやすくなります。
免疫力の低下で発症
発疹前に始まる痛み
連日30度以上の猛暑が続くと、食欲が失われてだるいなど体調不良に陥りがちです。
体力の低下に加え、仕事や家庭内などのストレスを抱えていると、免疫力はさらに弱まります。
この状態で発症しやすいのが「帯状疱疹」です。
過去に感染した水痘(水ぼうそう)で体内に潜伏した水痘・帯状疱疹ウイルスが、免疫力の低下に伴い再び増殖し、帯状疱疹を引き起こすのです。
「水ぼうそうの患者さんは冬に多いのですが、帯状疱疹の患者さんは、免疫力が低下しやすい夏に増えます。帯状疱疹は、水疱(水ぶくれ)を伴う発疹が生じる前から、ヒリヒリ、チクチク、ピリピリといった神経痛のような痛みが出るのが特徴です」と青山幸生先生は説明します。
水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうとして一度感染すると排除されることなく神経が集まる神経節に潜伏します。
つまり、過去に水ぼうそうを発症すると体内にウイルスを抱えることになるのです。
そのウイルスが免疫力が低下したときに神経に沿って再び増加し、激しい痛みと皮膚の発疹を生じさせます。
80歳までに日本人の3人に1人は発症するといわれるほど、身近な病気ともいえます。
「帯状疱疹を発症した場合、50代以降の約2割の方が『帯状疱疹後神経痛(PHN)』に移行するといわれています。PHNでは痛みが変化し、患者さんによっても表現が異なりますが、焼けるような、電気が走るような痛みが生じ、衣類が触れただけでも痛むようなつらい症状を抱えてしまうことがあります」
帯状疱疹の発疹前から始まる痛みは、水ぶくれがかさぶたになるのに伴い軽減されるのが一般的です。
ところが、PHNは、1カ月以上たっても痛みだけが続くのです。
しかも、変化した激しい痛みで夜眠れず、仕事や家事をするのも難しくなってしまいます。
高齢になるほどPHNのリスクは上がります。
発症のしくみ
【水ぼうそう:全身に発疹や痛み】
水痘・帯状疱疹ウイルスに感染し水ぼうそうになると、発熱と全身に水疱性の発疹が生じます。重症化するケースも。
▼
【潜伏期:症状はない】
水ぼうそうが治った後、水痘・帯状疱疹ウイルスは神経節という神経が集まった部分に潜伏します。このときは無症状です。
▼
【帯状疱疹:体の一部に発疹や痛み】
免疫力が低下した結果、水痘・帯状疱疹ウイルスが再び増殖し、神経に沿って皮膚に発疹と
痛みの症状を引き起こします。
▼
【後遺症:患部に痛みが残る】
水痘・帯状疱疹ウイルスを神経節に封じ込め、発疹の症状も消えたのに、強い痛みだけが、3カ月~半年も続きます。
皮膚の具合と痛みの経過
《帯状疱疹に関する「痛み」は2種類ある》
帯状疱疹の痛み
ウイルスが神経を侵していることを知らせる。患部のヒリヒリ、チクチク、ピリピリといった神経痛同様の痛みの症状。
帯状疱疹後神経痛
神経障害性疼痛などの痛みの病気へと移行。焼けるような、電気が走るような、などと表現される痛み。一定の間隔で長い間続く。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史