誰かの言葉にすぐ反応。SNS、ツイッター、ネット記事に常に反応......毎日、ムダな「反応」をしていませんか? すべての「苦しみ」は、自分が「反応する」ことから始まっています。それを理解することが、悩みを解決する第一歩です。
本書『反応しない練習』で、ブッダの超・合理的な考え方を学び、あなたも‟反応しない練習"を始めてみましょう。
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前の記事「ブッダの考え方は最先端の医学にも似た明快な処方箋/反応しない練習(2)」はこちら。
仕事・人間関係の悩みの「正体」って?
では、悩み・苦しみの〝原因"は、一体何でしょうか?
仏教の世界では、「苦しみの原因は"執着"にある」と、よく語られます。執着とは、手放せない心。どうしてもしがみついてしまう、こだわってしまう、怒りや、後悔や、欲望といった思いの数々のことです。
ただ、実際に"執着"を手放す修行法―世間では「座禅」とか「ヴィパッサナー瞑想」と呼ばれています――を振り返ってみると、もう少し「深い原因」が見えてきます。
人はなぜ、悩み、執着を手放せないのか。なぜ日頃、さまざまな問題を抱えてしまうのか。そうした悩ましい現実を作り出しているのは、"心の反応"であることが、明らかになってくるのです。
たしかに、私たちは、日々の仕事・生活のなかで「反応」しています。何かを考える。イヤなことがあって、つい腹を立てる。思い通りにいかない現実に、焦ってしまう。他人の目を感じて「何か悪いことをしてしまったのかも」と疑ったり不安になったりする......
これらは、すべて「心の反応」です。では、この「心の反応」は、何をもたらしているでしょうか。ついカッとなった怒りをぶつけて、人間関係を壊してしまう。大事な場面で、つい緊張してしまって、能力を出せずに失敗してしまう。忌まわしい過去をつい思い出して、「あのときああしていれば」と苦い後悔に沈んでしまう。つい考えすぎて「やっぱり自分はダメな人間だ」と落ち込んでしまう......これらも、全部「反応」です。
"執着"以前に、悩みを作り出しているものがあるのです。それが"心の反応"です。
「ああ、その通りだ。わたしはいつも、反応している。その結果がうまくいかなくて、悩んでいるのだ」と、あなたはきっと頷(うなず)くことでしょう。人間なら、誰でも思い当たるはずです。「反応」こそが、悩みの正体です。心の反応こそが、人生のトラブル、悩みを惹き起こしているのです。
となると、私たちが日々心がけなければいけないことは、一つです。
「ムダな反応をしない」ことです。
2500年前の智慧が「目の前の問題」に効く
人は悩みに直面したときに、つい反応して「闘おう」としてしまいます。不愉快な相手、ままならない現実に真っ向から向き合って、反応して、なんとか変えてみせよう、打ち勝ってみせようと、もがき、あがきます。
しかし真相は、「闘って勝てる」ことは、人生には、ほとんどありません。あなたが、どんな地位や権力や財産を手に入れても、あなたが今以上に「強く」なっても、「ままならない現実」は、いつもそばにありつづけるでしょう。2500年前にブッダが語った「人生には苦しみが伴う」という現実は、永久の真理です。この現実は、「闘う」という発想だけでは、けして乗り越えることはできません。
新しい生き方、もっと合理的な考え方が必要とされているのです。その合理的な考え方の一つが、「ムダな反応をしない」という心がけです。
「わかるけど、どうやって?」と思うことでしょう。ブッダはたくさんの方法を教えてくれています。これから明らかにしていきます。
次の記事「「なぜかわからないけど腹が立つ」状態の正体は何か/反応しない練習(4)」はこちら。
僧侶、興道の里代表。1969年、奈良県生まれ。中学中退後、16歳で家出・上京。放浪ののち、大検(高認)を経て東大法学部卒業。現在、インドで仏教徒とともに社会改善NGOと幼稚園を運営するほか、日本では宗派に属さず、実用的な仏教の「本質」を、仕事や人間関係、生き方全般にわたって伝える活動をしている。著書に『悩んで動けない人が一歩踏み出せる方法』(WAVE出版)、『独学でも東大に行けた超合理的勉強法』(サンマーク出版)、『消したくても消えない「雑念」がスーッと消える本』(大和出版)がある。著者ブログはこちら。
(草薙龍瞬/ KADOKAWA)
すべての「苦しみ」は、自分が「反応する」ことから始まっています。それを理解することが、悩みを解決する第一歩です。その事実と、具体的な方法論を教えてくれるのは、2500年前の悟った人、ブッダ(原始仏教)。本書では、原始仏典を紐解きながら、現代人の人生に活かせる合理的な考え方を紹介します。