リモートワークが続き、ねこ背の人が増加中です。これは自律神経の不具合、血流障害、内臓の圧迫...体内からさまざまな不調を起こします。そういう不調に悩む人を数多く改善に導く整体師・片平悦子さんの著書「きれいな姿勢に生まれ変わる ねこ背伸ばし」(アスコム)から、ねこ背のメカニズム、改善メソッドをご紹介します。
【前回】姿勢のベストポジションで「やる気スイッチ」が自然に入る/きれいな姿勢に生まれ変わる ねこ背伸ばし
ねこ背が招く、怖い病気
ねこ背とは、ただ背中が丸くなること。
そんなふうに簡単に考えてはいないでしょうか。
もし、「ねこ背は見た目が悪く、老けて見える」と思っているだけだとしたら、その考えはすぐに改めてほしいのです。
改めてお伝えしましょう。
ねこ背は、健康に大きな悪影響を及ぼします。
まず、下の図をご覧ください。
ねこ背は内臓にも負担!
ねこ背になると内臓が押しつぶされる
これはねこ背になったときの背骨の様子です。
ご覧のとおり、ねこ背は背骨が丸くなるだけではなく、肋骨と骨盤の間が狭くなってしまうことがおわかりでしょうか。
ここは本来、内臓がゆったりと入っている場所です。
ねこ背になると、この空間に入っている内臓がギューッと押しつぶされてしまいます。
たとえば、やわらかいパンをトングで持ったとき、思い切り強く握ったらどうなるでしょう。
その状態をあなたの体で再現しているのが、ねこ背なのです。
その結果、内臓がうまく働かなくなったり、ひどいときは位置がずれてしまったりするのです。
ここでは、いつの間にかついてしまったねこ背の習慣の結果、内臓に影響が出てしまった例をご紹介しましょう。
これを読めば、どれほどねこ背が体に悪いのか、おわかりいただけるでしょう。
ぽっこりお腹や胃下垂を招くねこ背
立位では、ほとんどの筋肉は天井と床をつなぐように上下についています。
ところが、2つだけ体を横に仕切る筋肉があります。
横隔膜と骨盤底筋群といわれる膜です。
横隔膜は肺・心臓とその他の臓器を分け、骨盤底筋群は下から内臓を支えています。
イメージとしては横隔膜がテント、骨盤底筋群がハンモック。
たとえば、胃はテントの下でハンモックに寝ている、と想像してください。
正しい姿勢なら横隔膜のテントはピンと張っているのですが、ねこ背になるとテントの上に雪が乗ったような状態になり、胃にのしかかってきます。
こうなると、押しつぶされた胃は下に垂れ下がってしまいます。
これが、胃下垂です。
ねこ背はぽっこりお腹や胃下垂を招いてしまうことも......
「食べると胃がもたれて、ゲップが出るのがいやでした。しかも下腹部だけがポッコリ出て見た目も悪くて......。胃下垂と診断されたのですが、まさかねこ背が原因だとは思いもしませんでした。座り方を変え、正しい姿勢を身につけたらすぐによくなり、胃痛も消えて毎日が快適です」(K・Iさん/56歳・女性)
ねこ背になると胃下垂になることがあるばかりか、下腹が出てしまうので、よいスタイルとはいえません。
「ねこ背伸ばしの座り方」で、ねこ背を治し、よいスタイルを保ちましょう。
ねこ背が治ると胸焼けもすっきり!
一時期テレビコマーシャルでよく目にした「逆流性食道炎」。
食道と胃の間は噴門と呼ばれ、食べ物が胃に入ってくるとき以外はキュッと閉じて強い酸性の胃酸が上がってくるのを防いでいます。
ところが、何らかの原因で噴門がゆるみ、本来胃に収まっているはずの胃酸が食道に逆流し、食道の内壁を痛めつけるのが、逆流性食道炎です。
こうなると食道が荒れ、胸焼けやむかつきがひどくなってしまいます。
噴門はいつもはゴム風船をしばったようにキュッと締まった状態でピンと張っている横隔膜を貫いています。
ところがねこ背になると横隔膜がたるみ、噴門が押し上げられた形になります。
すると、胃酸が食道に逆流しやすくなるのです。
ねこ背になると横隔膜がたるみ、逆流性食道炎を招くことも......
「いつも胸がムカムカして吐き気がするのは、ストレスのせいだと思っていました。ところがそれが逆流性食道炎で、しかもねこ背が原因だったなんて、思いもしませんでした。『ねこ背伸ばしの座り方』でねこ背を治し、ツラい胸焼けが消えてうれしいです」(A・Fさん/49歳・男性)
薬に頼るだけでなく、姿勢に気をつけ、ねこ背を治せば、ツラい胸焼けが軽減するでしょう。
ねこ背で内臓がつぶされ、便秘に......
ねこ背になることで、本来なら正しい位置にゆったりと収まっているはずの内臓が圧迫され、押しつぶされることは先にも説明いたしました。
この負担が最終的に及ぶところは、腸。
内臓の重みがかかった腸は、食べた物をスムーズに送り出すぜん動運動が弱くなりがちになります。
こうなると、便が詰まりやすくなります。
それだけではありません。
ねこ背によって腹直筋などのお腹の筋肉が衰えてしまいます。
それによって、便を排出する力が弱まってしまうのです。
内臓の重みが腸にかかり便秘に......
「若い頃から便秘気味だったのですが、歳をとるごとにどんどんひどくなってしまい、1週間出ないことも。野菜をたくさん食べたり、ヨーグルトを食べたりしたのですがあまり効果がなく、最終的には薬に頼っていました。ところがだんだん薬も効かなくなり、本当に困っていたのです。そんなとき、整体の先生からねこ背が便秘の原因になると聞いてびっくりしました。確かにずっとねこ背だったからです。そこで、『ねこ背伸ばしの座り方』を教えてもらい、ねこ背を治すことに努めました。すると、背中がまっすぐになり、なんと便通も整ってきたのです。こんなことで長年苦しめられてきた便秘が治るなんて、うそのようです」(T・Kさん/68歳・女性)
お腹の調子が悪かったら、ねこ背ではないか、チェックするとよいでしょう。
全8章にわたって『ねこ背』になる理由、そのメカニズム、そして、改善方法などをわかりやすく解説