高齢者が役所で怒鳴るのは前頭葉の機能の衰えから/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(11)

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「すぐにイライラしてしまう」「なんとなくモヤモヤする」...そんな「負の感情」との付き合い方に悩んでいませんか? 
年齢を重ねれば誰もが感情のコントロールが難しくなるもの。「負の感情」をコントロールし、スッキリ生き生きと生きるために、脳科学や心理学の知見によって得られた効果のある実践的な方法を、書籍『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』から学んでいきましょう。

前の記事「40代以降は「知能の老化」より「感情の老化」に注意が必要!/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(10)」はこちら。

前頭葉の低下で感情のコントロールができなくなる

前頭葉の働きが落ちてくると、さまざまなマイナス要素が表出してきます。

たとえばEQでいえば、自分の感情を知り、感情をコントロールする、それから自分でやる気を起こさせるのも前頭葉の働きですから、こうしたことが難しくなってきます。

また、人を怒鳴りつけたり、あるいはおもわず手が出たりといったように、怒りを表に出してしまうのは前頭葉機能の低下で起こります。
ですから、高齢者が傘で人を殴るとか、あるいは役所の職員に怒鳴りつけたりするのは、やはり前頭葉の機能が落ちていることが原因と考えられます。

そうした人でも若いときは案外、穏やかな性格だったのではないでしょうか。少なくともそのような行動に出ることはなかったでしょう。
実際、感情的になることは脳の若々しさを保つためには必ずしも悪いことではないのです。何の喜怒哀楽もない人は、それはそれで脳の機能に問題があると言えます。大事なことは、いくら怒ってもそれを行動化しないことなのです。

怒っているからといって怒鳴ったり、手を上げたりといった直接的な行動に移さないようにすることを、心理学の言葉で「アンガーコントロール」といいます。
このアンガーコントロールとは、基本的には「怒ってはいけない」ということではありません。
怒りというのは、溜め込んでしまうとストレスの元となり、胃潰瘍の原因になったりします。かといって怒りをそのまま暴力や怒鳴りつけるという行動に移すのはもちろんいけません。
怒ってもいいけれど、それを直接的な行動に移さず、うまく切り替えができることが怒りをコントロールできている状態です。これを目指すべきなのです。

ところが、前頭葉の機能が低下してしまうと怒りがいつまでもなくならなかったり、直接的な行動に出やすくなったりします。手を出したくなる感情は、基本的には大脳辺縁系で起こります。大脳辺縁系で起こった、たとえば怒りとか恐怖であれ、ある種の原始的感情応です。そこで前頭葉がブレーキをかけて行動化しないで済むようにしているのです。前頭葉の働きが悪くなると、ブレーキをうまくかけることができず、暴力や暴言といった行動に直接に走ってしまうのです。

大脳辺縁系で起こる感情は、どちらかと言えば反射的な感情です。たとえば、誰かから「バカ」と言われたら、誰でも怒りを感じます。そのとき、前頭葉の働きがオブラートをかけて怒りを柔らかくするのです。「なんだか腹立つな。でも、こんな人は相手にしないでおこう」と怒りを受け流すことができるのも前頭葉の働きです。これを一般的に理性といっているわけです。

そうしたことができるのは、犬や猫などの動物と比べて人間だけが前頭葉がやたらと大きいからと考えられます。
私たち人間は「バカ」と言われても、それをバネにして「よーし、じゃあもっと勉強してやるぞ」「仕事で成功してやるぞ」と怒りを意欲に転化することさえできます。優れた芸術家はそうした原始的な感情を表現する能力に長けた人たちと言えるでしょう。

怒りと同じように、喜びや悲しみといった感情も、それをプラスの価値観に転化できる人は前頭葉の働きが優れているのです。こういう人は仕事で失敗しても切り替えがうまいので、最終的には仕事がうまくいくようになり、仕事ができる人になっていくのです。

 

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和田秀樹(わだ・ひでき) 

1960年、大阪府生まれ。精神科医。1985年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て独立。エグゼクティブ・カウンセリングを主とする「和田秀樹こころと体のクリニック」を設立し、院長に就任。国際医療福祉大学大学院教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)、川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(とくに自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。著書に『感情的にならない本』(新講社)ほか多数。

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『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』

(和田秀樹/KADOKAWA)

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この記事は書籍 『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』からの抜粋です
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