40代以降は「知能の老化」より「感情の老化」に注意が必要!/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(10)

40代以降は「知能の老化」より「感情の老化」に注意が必要!/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(10) pixta_28603292_S.jpg毎週火曜、水曜更新!

「すぐにイライラしてしまう」「なんとなくモヤモヤする」...そんな「負の感情」との付き合い方に悩んでいませんか? 
年齢を重ねれば誰もが感情のコントロールが難しくなるもの。「負の感情」をコントロールし、スッキリ生き生きと生きるために、脳科学や心理学の知見によって得られた効果のある実践的な方法を、書籍『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』から学んでいきましょう。

前の記事「脳腫瘍の手術後性格が激変したエリート商社マンの例/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(9)」はこちら。

EQは年とともに向上するという誤解

日本ではIQの能力は学生時代までに決まってしまうもので、後の生活でそう伸ばすことはできないと考える人が多く、学歴が重視されてきました。それとは逆に、EQは後天的に伸ばすことができる能力だととらえられています。年齢が高くなると、それだけさまざまな社会経験を積んできているのでどんどんEQ的な能力が上がっていくと思われているのです。

ところが、実際はどうでしょうか。
電車内での乗客同士のトラブルは50代以上が多いというのはよく聞く話ですし、居酒屋で店員に向かって「客をなんだと思っている!」などと激高しているのもやはり中高年が多いという話があります。

もちろん、日本全体が超高齢社会になってきて、中高年より年上の人の数が相対的に増えてきたからとも言えますが、それだけともいえないような気がします。
会社の人間関係においても、部下を怒鳴りつける上司や、取引先の人に見下した態度をとる上司というのはけっこういるのではないでしょうか。年をとれば、人間関係がうまくいくようになるかというと必ずしもそうではないのです。

なぜそうなるかというと、本書をここまで読んだ方であれば、おわかりいただけると思います。前頭葉の機能が落ちたためにEQ能力も下がって、感情をうまくコントロールできなくなっているのではないかと考えられるからです。残念ながら人間というのは、放っておけば歳をとればとるほどEQ能力が落ちていくのです。ゴールマン博士らの研究によると、40歳くらいまでは歳を重ねるごとにEQは上がってくると考えられています。

ところが、前述のように40歳を越えるとEQが低下するということが指摘されています。
一般的に前頭葉は、教育や知識、経験の刺激によって鍛えられるので、本来ならば、知識や経験が増えていくに従って40代までは順調にEQは伸びていきます。しかし、歳をとるに伴って前頭葉が物理的に縮み始めるので、機能が落ちていくのではないかと考えることができます。

40代から放っておくとプラスよりもマイナスのほうが多くなってしまうということです。しかし、プラス面を多くすれば、それに打ち勝つことができるわけです。
もちろん、70代80代になってプラスのほうが大きく勝ち越すということは難しいかもしれませんが、40代から60代ならプラスのほうを上回らせることは難しくないのではないかと思われます。

一方、IQは20代をピークに70代になってもあまり低下しません。東京のベッドタウンである小金井市のある地域で、70代の高齢者を15年間追跡した研究があります。IQは100を平均値とし、約70%の人がIQ 85 ~115の間に収まると言われているのですが、小金井市の高齢者たちは平均105でした。

もしかすると、地域的に知的レベルが高い人が集まっていたのかもしれませんが、それでも70代でも100をキープしているというのは注目に値します。
このことは先ほどの「理解力はそれほど落ちない」という話と符合します。どうやら私たちは知能の老化を気にするよりも、感情の老化のほうを気にしておいたほうがよさそうです。

 

次の記事「高齢者が役所で怒鳴るのは前頭葉の機能の衰えから/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(11)」はこちら。

和田秀樹(わだ・ひでき) 

1960年、大阪府生まれ。精神科医。1985年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て独立。エグゼクティブ・カウンセリングを主とする「和田秀樹こころと体のクリニック」を設立し、院長に就任。国際医療福祉大学大学院教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)、川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(とくに自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。著書に『感情的にならない本』(新講社)ほか多数。

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『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』

(和田秀樹/KADOKAWA)

感情の不調は"脳"で治す! 医師にしてベストセラー作家が教える、誰でもできる習慣術。「笑い」を解放することが前頭葉を刺激する、「"こだわり"にこだわらない」がポイント、競輪競馬やゴルフ、マラソンの向上心は脳にいいなど、脳科学や心理学の知見によって得られた「効果のある」「実践的な方法」を一挙に紹介!

 
この記事は書籍 『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』からの抜粋です

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