たかが便秘とあなどってはいませんか? 背景に病気が隠れている場合や、過度のいきみが原因で死に至るケースもあるんです。今回は、横浜市立大学大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室 主任教授の中島 淳(なかじま・あつし)先生に「便秘の原因と改善方法」ついてお聞きしました。
便秘は排便回数が週3回未満または排便時に困難を伴う状態(※1)のことです。
毎日出ていても、排便困難であれば、便秘が疑われます。
男女とも高齢になるほど患者数が増えます。
上に示した原因以外にも、摂取する水分量や食事量の減少、がんの痛み止めや精神疾患の薬の服用などがあります。
背景に病気が隠れていることもあります。
要注意なのは大腸がんです。
また、パーキンソン病、レビー小体型認知症は発症の5~10年前から便秘が始まることが分かっています。
橋本病や糖尿病も疑われる病気の一つです。
従来、便秘は命に関わる病気ではないとされてきましたが、過度のいきみで血圧が急上昇し、心筋梗塞や脳卒中(脳出血・脳梗塞・くも膜下出血)によって命を落とす人もいます。
高齢になるとただでさえ動脈硬化が進んでいるので、普段、血圧のコントロールが良好でも油断できません。
慢性腎臓病の発症や、食欲低下・低栄養からサルコペニア・フレイル(※2)につながることもあり、いまや積極的に治療すべき病気になっています。
※1 過度のいきみや残便感など硬い便が出るときの症状のこと。
※2 サルコペニアは筋肉量の減少や筋力の低下による身体機能の低下、フレイルは心身の活力(筋力や認知機能等)が低下した状態。
[高齢者の便秘の主な原因]
・大腸の働きが弱って、便を運ぶ力が低下
・腹筋の力が衰えて、排出する力が低下
・感覚の低下によって、便意を感じない
[主な治療法]
・食生活の改善
・日常的な運動
・排便環境を整える
・薬物治療
排便の仕組み