最近どうも咳が抜けない...、という人はいませんか? 実は、大人になってから発症する「ぜんそく」には注意が必要なんです。そこで、池袋大谷クリニック 院長の大谷義夫先生に、「長引く咳のほかの病気との合併」や「ぜんそくの予防&治療法」について教えていただきました。
ほかの病気が合併。夜間の咳もひどくなる
長引く咳の原因の一つに、副鼻腔炎(後鼻漏)が関係するケースも多いそうです。
副鼻腔は、鼻の中の周辺に広がる空洞で、この中にウイルスや細菌、またはアレルギーで炎症が起こるのが副鼻腔炎です。
炎症によって生じた膿がのどの方に流れると、膿を排除しようとして咳が出ます。
「そもそも鼻から気管支は気道としてつながっていること、さらにぜんそくは、アレルギー体質の方がなりやすいことから、副鼻腔炎を併発している人は少なくありません。このような場合は、ぜんそくの治療・予防と同時に、副鼻腔炎の治療も重要になります」
副鼻腔炎以外にも、逆流性食道炎が合併している人もいるそうです。
逆流性食道炎は、胃の入り口から胃酸が食道の方へ逆流する病気です。
胃は表面の粘膜を胃酸から守る仕組みがありますが、食道の粘膜にはありません。
そのため、胃酸が食道へ逆流すると、炎症を引き起こして胸やけなどの症状につながります。
また、口の方へ酸っぱい胃液が込み上げてくることもあります。
このように逆流性食道炎の胃酸で気道が刺激されることでも、咳は出やすくなるのです。
「逆流性食道炎は、体を横にしたときに胃酸が逆流しやすくなります。ぜんそくも、気道が敏感になりやすい就寝中に、咳の症状が強くなることがあります。夜間の咳が止まらないようなときには、医療機関を早めに受診しましょう」
いずれにしても、きちんと原因を確かめた上で、適正な治療と対策が望ましいといえます。
特に今冬は、新型コロナウイルス感染症と、それに伴う肺炎のリスクもあります。
2週間も咳が止まらないようであれば、呼吸器内科の専門医のいる医療機関で受診を。
一方、ぜんそくの予防は、治療薬を適切に使用し、発作の原因となるアレルゲン(抗原)を避けることが大切です。
また、のどや気道の炎症を抑えると期待される食品も、取り入れるとよいそうです。
「コーヒーのカフェインには、気管支拡張作用や抗炎症作用があり、1日3杯飲むと、ぜんそく発作が28%低減されるとのイタリアの報告があります。また、はちみつも役立つといわれます」と大谷先生。
長引く咳は放置しないできちんと対処しましょう。
咳が出やすい時間や時期がある
ぜんそくは就寝後や明け方に咳がひどくなる傾向があります。一方、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎は日中に咳が出やすくなります。
●咳を放置するとこんな大病が隠れていることも!
【肺がん】
早期段階では無症状ですが、進行すると咳や血痰、胸痛、動悸などの症状が現れやすくなります。
【結核】
繰り返す咳が特徴。近年、10~20代の若者や80代以上の高齢者で患者数が増加傾向にあります。
【肺炎】
咳や発熱が続き重症化すると命に関わることも。原因は感染症や誤嚥など。早めの対処がなにより。
●予防をするなら
《アレルギーの原因を遠ざける》
ハウスダスト、ペットの毛
花粉、真菌(カビ)
ハウスダストがたまりやすいカーペットなどは避け、フローリングに。こまめに掃除をするなど生活環境を整えましょう。
《アレルギー以外の原因を遠ざける》
アルコール、刺激物
過労やストレス、寒暖差
《簡単エクササイズ》
鼻呼吸
鼻から息を吸っておなかを膨らませ、ゆっくり口から息を吐きながら、おなかを凹ませます。10回繰り返します。
はちみつ入りコーヒー
気管支拡張作用や抗炎症作用のあるコーヒーに、抗炎症作用などを持つはちみつを加えることで、Wの作用が期待できます。
●治療するなら
吸入ステロイド薬
炎症を抑えてぜんそく発作を予防する薬です。毎日使用する「長期間管理薬」とも呼ばれ、現在、ぜんそく治療の基本となっています。吸入ステロイド薬に、気管支を拡張するβベータ2刺激薬を配合したものが、ぜんそく治療の主流になっています。
生物学的製剤
吸入ステロイド薬を最大量使用してもぜんそく発作を頻繁に生じる難治性ぜんそくの方がぜんそく患者の数%います。現在、4種類の生物学的製剤があり、ぜんそくの炎症を根本的に抑えてくれます。ただし、かなり高価なので、呼吸器内科の専門施設にご相談を。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史