新型コロナウイルスの流行により、感染予防対策とともに「免疫力」という言葉をよく耳にするようになりました。でも、「免疫力」って何なのか、今一つわからない...という人も多いですよね。そこで今回、免疫の専門家をはじめ、10人の名医に「免疫力を高めるためのヒント」を教えてもらいました。今回は「腸のスペシャリスト」である京都府立医科大学の内藤裕二先生に、「免疫力を整えるために摂りたいものと減らすもの」をお聞きしました。
摂りたいもの
●食物繊維
腸内で、酪酸などの短鎖脂肪酸を作り出すためのエサとなる食物繊維を摂ることで、腸内環境を整えやすくします。
食物繊維には水に溶けやすいもの(水溶性)と溶けにくいもの(不溶性)があり、特に水溶性食物繊維を摂るのがおすすめ。
ちなみに酪酸菌は、ビフィズス菌や乳酸菌などと並ぶ有用菌の一種で、腸内環境を改善させる働きがあります。
●乳酸菌
近年の研究では、唾液中のIgAを増やす食品にヨーグルトがあることが分かっています。
R-1乳酸菌を使用したヨーグルトを摂取し続けると、3カ月後には唾液中のIgAが約1・6倍増加。
また、シロタ株(ラクトバチルスカゼイ・シロタ株)を使ったものを摂取すると、運動(※)によって減ってしまうIgAの減少を抑制できることが分かっています。
※免疫物質は、激しい運動をすることで低下しやすいことが分かっています
●発酵食品
みそや納豆、酢などの発酵食品には、乳酸菌や酵母、酢酸菌などの発酵菌と呼ばれる微生物が含まれています。
これらの発酵菌は、腸内の悪玉菌を減らして善玉菌を増やす働きがあるので、日々、食べ続けることで腸内環境が整い、免疫力のアップが期待できます。
ただし、塩分が多いものは腸内環境を悪くする原因となるので漬物などの食べ過ぎには注意が必要です。
減らすもの
●砂糖・塩
腸内環境を悪くするものの代表が、砂糖と塩です。
市販のフルーツジュースや低脂肪のヨーグルトの中には思った以上に糖分を多く含んでいるものも。
また、おまんじゅうやケーキなど、砂糖を多く含む食品が好きな人は、週に一度に制限して、他の日はフルーツにするなど、甘いものへの欲求を上手に満たす工夫をしましょう。
和食には塩分が多いため、ついつい過剰になってしまうことも。
塩分の摂り過ぎは高血圧や動脈硬化などの不調を招いたり、胃がんのリスクが高まるともいわれています。
最近の研究では、塩分が特定の乳酸菌を減らしてしまうことも分かっています。
●高脂肪な食品
腸内環境を悪くするものには、高脂肪な食品の摂取もあります。
動物性たんぱく質や脂肪の摂り過ぎは、腸の劣化を引き起こす原因となります。
「肉類や揚げ物が好き」「ソーセージやベーコンなどの加工肉をよく食べる」「こってりとした味つけが好みだ」といった方は、腸内に悪玉菌が多くなりやすいことが推測できます。
できるだけ脂肪は控えめにして、さまざまな食品をバランスよく食べることを意識するとよいでしょう。
●薬
IgAは、薬の影響で低下することが分かっています。
特に、免疫系の疾患やリウマチ、高血圧、潰瘍性大腸炎などで処方される薬剤のほか、ステロイド剤もIgAを低下させる要因となります。
心当たりのある方は、いま飲んでいる薬が本当に必要なのか、別の薬剤に変更は可能なのか、医師と一緒に見直してみるのもよいでしょう。
また、自己判断で薬を中断したり、必要以上に飲み続けたりすることは絶対にやめましょう。
【内藤裕二先生の〝腸活〟で免疫を高める習慣】
毎朝一杯の〝絶好腸〟ドリンク
自ら考案したオリジナルドリンクを毎朝飲んでいる内藤先生。豆乳、バナナ、はちみつに粉末の青汁と食物繊維を合わせた腸にいいドリンクです。
【まとめ読み】特集「名医10人の免疫力を上げる生活習慣」記事リスト
取材・文/オフィス・エム(寳田真由美) 撮影/齋藤ジン イラスト/鈴木衣津子