「自分が望んだ検査」や「ほしい薬」の処方をしてもらえず、お医者さんに満足できない...実はそれ、あなたの「病院のかかり方」に問題があるのかもしれません。そこで、多彩な情報発信をしている現役医師・山本健人さんの著書『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』(KADOKAWA)より、「知っておくと、もっと上手に病院を利用できる知識」をご紹介。医師&病院の「正しい活用術」を、ぜひ手に入れてください。
「付き添いの家族も、ついでにちょっと診てもらうことはできませんか? アドバイスくらいでいいので...」
【答え】
① 診察はできませんが、短時間の相談にお答えすることはあります
② ただし、原則ご本人が正規の方法で診察を受けてください
「診察は平等」の大原則を守る
患者さんを診察していると、付き添いのご家族から「ついでに相談したい」と言われることがよくあります。
たとえば、ご夫婦で来院され、付き添いの奥さまが「最近めまいがする」とか、「昨日からちょっとお腹が痛い」といったように、世間話の延長で相談されるケースがよくあるのです。
ご本人にとっては、大した症状ではないからわざわざ病院にかかるまでもないけれど、何もせずに放置するのは不安。
そこで、家族に付き添ったついでにちょっと聞いてみよう、という気持ちになるのでしょう。
その気持ちはよく理解できます。
病院の予約が取りにくく、ようやく行けても待合室で長時間待たされる、となれば、「ついでにちょっと」という気持ちになるのも仕方ないと思います。
私自身は、短時間で済むくらいのささいな相談であれば、できる範囲でコメントすることはあります。
「万が一、大きな病気だったらどうしよう」というご家族の不安な気持ちもわかりますので、無下に断ることはしません。
しかし、基本的なポリシーとしては、「どんな患者さんも診察の機会は平等であるべきだ」と考えています。
患者さんの性格はそれぞれ違います。
たとえば、家族の付き添いで病院に行ったときに、「ついでに私も」と積極的に医者の意見を求められる人がいる一方で、「こんなことまで聞いたら迷惑だろうな」と、ささいな相談すら遠慮してしまう人もいます。
家族どころか、ご自身が患者であるのに担当医に遠慮してしまって聞きたいことがうまく聞けない、という人もいるはずです。
すると、何でも遠慮なく聞ける性格の人が得をして控えめな人が損をする、という不公平が起こってしまうのです。
そこで私は、もし患者さんの付き添いで来た人が自分のことを相談し始めて、それが長くなりそうだったら、「申し訳ないのですが、診察の予約をして正規の形で受診していただけませんか」と伝えるようにしています。
診察の機会も、それにかかる費用の面でも、病状が同じならすべての患者さんが「平等」であるべきだと考えるからです。
「ちょっとした相談」は患者にとってもマイナスになる
また、ご本人にとってはささいな質問でも、医者にとっては簡単には答えづらいと感じることもあります。
どんな小さな回答でも、そこには「医者としての責任」が発生するからです。
たとえば、私たち医者は知人とのプライベートなやりとりの中で、健康相談を受けることがよくあります。
友人から、「子どもの咳が止まらない。受診した方がいいか?」「昨日から下痢が続いている。何の薬を飲めばいい?」といった質問を受けることは日常茶飯事です。
そのときに「病院に行って相談してください」とだけ返すことはもちろんないのですが、答えるとしても一般論としての回答しかできないことを承知してもらいます。
本人を診察したわけではありませんし、必要な検査も院外ではできないため、無責任な回答はできません。
もし自分の判断が間違っていたら相手は健康を害するかもしれませんし、中途半端に答えることでかえって相手の治療機会を奪ってしまうかもしれないからです。
やはり、心配なことがあるときは、正規の手続きをして病院で診察を受けるのがその人にとってもベストである、というのが私の意見です。
【まとめ】『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』記事リスト
医師や医療行為への「よくある疑問や不安」を、Q&A方式でわかりやすく解説! 「医学のスペシャリスト」を上手に利用するための「34のエッセンス」が詰まっています