女性は40代から増え始め、50代から急増し、65歳以上では約40%以上の人が経験していると言われる尿漏れは、私たち世代には身近な問題ですよね。そこで、水分の摂り方や体操、最新治療などの「尿漏れ対策」について、女性医療クリニックLUNAネクストステージ院長の中村綾子(なかむら・りょうこ)先生にお聞きしてきました。まずは、知っておきたい「尿漏れの仕組み」についてご紹介します。
男性より女性に多い症状。生活習慣病や肥満も要因に
尿漏れの主な原因は「骨盤底筋」の緩みや「過活動膀胱」など膀胱の不安定性などです。「骨盤底筋は膀胱や尿道を支える筋肉群で、排尿に大きな影響を与えていますが、女性の筋肉や靭帯は男性よりも弱く、また、妊娠や出産によりダメージも受けるため、尿漏れの症状は女性に多く現れるのです」と、中村綾子先生。
骨盤底筋が緩んで膀胱や子宮の重さに耐え切れず、膣から臓器が脱出する「骨盤臓器脱」、閉経で女性ホルモンが低下し、外陰部の萎縮に伴って排尿などに影響を及ぼす「閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)」が原因になることも。
動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病、肥満なども尿漏れのリスクとなります。
「尿漏れは年齢とともに症状も悪化します。『恥ずかしい』と思わず、早めに女性泌尿器科などへ行きましょう」(中村先生)
「尿漏れ」の3つのタイプ
① 腹圧性尿失禁(50%の人)
[主な症状]
せきやくしゃみをしたときや重い荷物を持ったとき、おなかに力(腹圧)がかかることで尿が漏れます。軽症なら、骨盤底筋トレーニングが効果的。
[主な原因]
加齢や出産、肥満などで骨盤底筋が緩むことにより尿道が十分に閉じません。
② 切迫性尿失禁(20%の人)
[主な症状]
強い尿意を突然感じ、我慢し切れずにトイレに行く途中や便座に座る前に尿が漏れます。水が流れる音を聞いたりしただけで強い尿意を感じることも。
[主な原因]
過活動膀胱(下記)のほか、膀胱炎などの病気による膀胱の神経の過敏。
【こちらもチェック】切迫性尿失禁を誘発する「過活動膀胱」とは
膀胱の底部にある神経が過敏に反応し、尿が十分にたまらなくても排尿を抑えられなくなる症状。発生の仕組みは完全には分かっていませんが、加齢のほか、骨盤底筋の緩み、閉経、生活習慣病などとの関連が指摘されています。
③ 混合性尿失禁(30%の人)
[主な症状]
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の症状が混合。
尿漏れに関係する「骨盤底筋」とは?
骨盤の底にあり、恥骨から尾骨の間に広がる筋肉群。膀胱や子宮などの臓器が落ちないように支えており、尿道、膣、肛門の3つの管が貫通しています。これらの機能は骨盤底筋が連動して動くことで保たれます。
取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/たつみなつこ