悪化すると死に至ることも...「腎盂腎炎」の基礎知識

腎臓の中にある「腎盂」(じんう)という部位に細菌が繁殖し、炎症を起こす病気を「腎盂腎炎」といいます。発熱、背中の痛み、排尿痛などがある場合は迷わず受診しましょう。東京品川病院 泌尿器科部長 青木九里(あおき・くり)先生に、原因や治療法を教えていただきました。

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基礎疾患がある場合は入院することも

腎盂腎炎は、腎臓の中にある「腎盂」という部位に細菌が繁殖し、炎症を起こした状態です。

腎盂は尿を集めるための器官で、尿管によって膀胱とつながっています。

膀胱と尿管の間に尿の逆流を防止する機構があるため、通常は膀胱から腎臓へ尿が逆流することはありません。

しかし膀胱炎によって尿の逆流防止機構が破壊されると、細菌を含んだ尿が腎盂に逆流し、腎盂腎炎を引き起こします。

腎盂腎炎は、単純性と複雑性の2種に分かれます。

単純性腎盂腎炎は、合併症(ある病気が原因となって、別の病気を引き起こすこと。例えば、糖尿病の合併症として、動脈硬化症が引き起こされる...など)のない腎盂腎炎のこと。

いっぽう複雑性腎盂腎炎は、尿路結石や膀胱尿管逆流症などの尿路の基礎疾患や、糖尿病や膠原病などの全身性の基礎疾患、抗がん剤、ステロイド治療による免疫低下状態などによって発症する腎盂腎炎のことです。

閉経後に発症する腎盂腎炎は、ほとんどが複雑性。

悪化しやすく、腎盂腎炎そのものと並行して、基礎疾患の治療が必要なケースもあります。

また、男性は尿道が長く、炎症が腎盂にまで至ることは稀です。

ただし基礎疾患がある場合は、年齢を問わず腎盂腎炎になる可能性があります。

腎盂腎炎を引き起こす細菌は、腸や皮膚にいる大腸菌がほとんどです。

治療には、抗生剤を使用します。

軽症の場合は、通院と服薬のみで治療します。

ただし複雑性腎盂腎炎は急激に悪化することもあるので、軽症でも入院をすすめられるケースもあります。

腎盂腎炎が悪化すると、細菌が血液へ侵入して敗血症を招き、最悪の場合、多臓器不全で死に至ることもあります。

発熱、背中の痛み、排尿痛などの症状があれば迷わず泌尿器科を受診してください。

腎臓の役割

腎臓:血液をろ過し、尿を作る
膀胱:尿をため、一定量になったら排出する
尿道:尿を体外に排出する。男性は約20cm、女性は約4cmほどの長さ
尿管:腎臓から膀胱へ尿を運ぶ。膀胱とつながる部分には、尿の逆流を防ぐ機構がある

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腎動脈:腎臓に血液を運ぶ血管
腎実質(じんじっしつ):尿を作る部分
腎静脈:腎臓でろ過された血液を運ぶ血管
腎盂:できた尿を集めて、尿管へ流す部分

【腎盂腎炎が悪化すると...】
腎臓は血流の豊富な器官で、血中の老廃物の排出や、体液のバランス、血圧の調整などさまざまな役割を担っている。腎盂腎炎が悪化すると、腎臓で繁殖した細菌が血液に侵入し、やがて全身に炎症を引き起こして敗血症になるおそれがある。

●腎盂腎炎の主な症状
・背中の左右どちらかが痛む(痛む方に、炎症を起こしている腎臓がある)
・発熱(38度以上の高熱になることも)   
・全身に倦怠感がある          
・排尿時に痛みや違和感がある      
⇒悪化する前に、必ず病院へ!

治療のポイント
・処方された抗生剤をしっかり飲み切る(自己判断で服用を中止しない)       
・食事と睡眠を確保して安静にし、免疫力を高める
・膀胱炎や腎盂腎炎を繰り返す場合は別の疾患や治療が原因になっている可能性もあるので、早めに医師に相談する 

規則正しい生活と、定期的な健診を

排尿には、膀胱や尿道の細菌を洗い流す効果があります。

排尿の量や回数が減ると膀胱に細菌が繁殖しやすくなるので、毎日きちんと水分を摂りましょう。

免疫力の低下も、細菌の繁殖と炎症を招きます。

食生活や運動、睡眠のバランスを整え、免疫力を高めることがいちばんの予防法です。

また、膀胱と尿管の逆流防止機構が生まれつき弱く、膀胱から尿管へ尿が逆流する疾患を持つ人もいます。

定期的に人間ドックなどの健診を受け、全身に関わる病気の早期発見・治療につなげてください。

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取材・文/高橋星羽(デコ) イラスト/片岡圭子

 

東京品川病院 泌尿器科部長
青木九里(あおき・くり)先生
1995年、東京女子医科大学卒。東邦大学大学院博士号取得。東邦大学医療センター大森病院などを経て現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本性感染症学会認定医。

この記事は『毎日が発見』2020年5月号に掲載の情報です。

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