急に悪くなるイメージだけど・・・違うの?がん治療の名医が知ってほしい「がんが大きくなる速度」

2018年にがんで亡くなった女優・樹木希林さん。その治療にあたった放射線治療医・植松稔さんは、著書『世界初 からだに優しい 高精度がん治療』(方丈社)の中で樹木さんの長女・内田也哉子さんと対談し、約10年に渡った治療期間を振り返っています。今回は収録された対談の一部と、植松医師が考える「がん」について連載形式でお届けします。

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がんが大きくなる速度について

初めてがんの診断を受けたときには、急に病気になってしまったような印象を持ったり、再発や転移が見つかったときには、急速に進行してしまったという気持ちになることもあるかと思います。

しかし、がん細胞というのは、通常は身体の中で一定の速度で細胞分裂を繰り返して数を増やし、細胞に寿命がくれば一定の速さで脱落しています。

そこで、増殖のスピードが脱落のスピードを上回ると、がん細胞の塊が、時間をかけて徐々に大きくなっていくのです。

大勢の患者さんを診ていると、この、「がんの塊」が大きくなる速度が速い場合も遅い場合もあり、個人差がとても大きいことがわかります。

この個人差の本質は、微妙に異なるがん細胞の遺伝子の違いです。

同じ部位に発生した同じ病名のがんでも、一人ひとりの患者さんによって、実はがん細胞の遺伝子は異なっていて同じ病気ではないのです。

最近の研究で、ヒトとチンパンジーの遺伝子の差は、DNAのレベルでは数パーセントしか認められないのに、最終的に両者の身体を構成するたんぱく質は、8割も異なることがわかってきました。

このように、わずかにでも遺伝子に差があると、結果として構成されるたんぱく質には大きな違いがでてしまいます。

だから、細胞分裂の速度が速いがんもあれば、ほとんど増大しないとても穏やかながんもあるのです。

その上、初めは穏やかな性質で、ゆっくりと分裂していたがん細胞が、途中から遺伝子の変異を起こして分裂が速くなることもあります。

さらに、実際の患者さんの身体の中では、がん細胞と免疫細胞の闘いが続いていますので、これもがんの塊が大きくなる速度に大きな影響を与えます。

このように様々な因子が絡み合っていますので、一見ただの腫れ物に見えるがんの塊の中では、実際は本当に複雑な現象が起きているのです。

植松医師×内田也哉子さん特別対談も「からだに優しい高精度がん治療」記事リストを見る

115-H1-karadaniyasashiigan.jpg内田也哉子さんとの対談に始まり、ピンポイント照射が求められる理由、現代のがん治療のことが全7章からわかります。故・筑紫哲也さんの家族との対談も収録

 

植松稔(うえまつ・みのる)
1956年生まれ。がん放射線治療医、UMSオンコロジークリニック院長。医学博士。患者の心と体の負担が少ないがん治療を追究し、世界初の4次元ピンポイント照射(がんを追跡照射)を開始。安全で確実にがんを狙い撃ちする治療法で、数多くのがんを病期によらず「切らずに治し」、「がんなら手術」という常識に意識改革をもたらしている。

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『世界初 からだに優しい 高精度がん治療 ピンポイント照射25年間の軌跡』

(植松稔/方丈社)

がん治療の常識に改革をもたらす放射線治療医の最新著書。がんの常識や現代医療の問題点がわかると「ピンポイント照射」という技術の革新性が、そして20人の闘病手記から、その真価が見えてきます。「がん治療を選択すること」について考えさせられる必読の一冊です。内田也哉子さんとの対談の続きも。

※この記事は『世界初 からだに優しい 高精度がん治療 ピンポイント照射25年間の軌跡』(植松稔/方丈社)からの抜粋です。
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