肝細胞に中性脂肪がたまる「脂肪肝」。お酒を飲まないから大丈夫、と思っている人もいるのでは? でも実は、誤った食生活を続けると、お酒をあまり飲まなくても脂肪肝になる危険性があるんです。今回は栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原 毅に脂肪肝の基礎知識やセルフチェック方法について伺いました。
ランチに食べるのは「とんかつ」か「そば」か
一般的に生活習慣病の食事の見直しでは、総カロリーを抑えることを医師からすすめられます。
昼食でとんかつ定食を食べていた人は、総カロリーの低いざるそばにメニューを変えるといった見直しです。
とんかつ定食900キロカロリー以上に対して、ざるそばは300~350キロカロリー程度なので、ざるそばの方がヘルシーです。
ところが、カロリーにこだわり過ぎるような食事の見直しが、脂肪肝を撃退するときには落とし穴になります。
「とんかつよりもそばの方が糖質を多く含みます。そして、そばをすすってよくかまずに食べるといった行為も、脂肪肝の後押しをします。とんかつ定食でご飯を半分にすれば、ざるそばよりも体内で生じる糖質を抑えることが可能です。とんかつをゆっくりかんで食べれば、糖質の吸収はさらに抑制できますよ」と栗原先生。
糖質の吸収のしやすさは、グリセミック指数(GI値)が参考になります。
GI値は、食べたときの血糖値の上昇具合を示しています。
食後血糖値が上昇しやすい食材は、糖質がたくさん含まれているのです。
和食の煮物と洋食のステーキでは、総カロリーではステーキの方が高くなりますが、砂糖やみりん、芋類などによってGI値は煮物の方が高くなります。
和食だからといって、必ずしもヘルシーとは言い切れないこともあるのです。
下の「ちょっと制限したい食材」を参考にしてみてください。
「脂肪肝」を遠ざける食材の知識&生活習慣
肉や魚、油には糖質が含まれないため制限なしで食べても脂肪肝にはなりにくいといえます。
"油は太る"のイメージは消し去りましょう。
以下で、少し制限したい食材と制限なしでOKの食材を確認してください。
●ちょっと制限したい食材
目安量 正味(g)/ 糖質量(g)
ご飯1膳 150g/55.2g
そば(ゆでたもの) 200g/48.0g
ロールパン1個 30g/14.0g
ごぼう1本 200g/19.4g
じゃがいも1個 150g/24.5g
みかん1個 80g/8.8g
りんご1個 225g/33.4g
●制限なしでOKの食材
目安量 正味(g)/糖質量(g)
あじ1尾 80g/0.1g
わかめ 15g/0.3g
牛乳 210g/10.1g
卵1個 ―/0.2g
ほうれん草 80g/0.2g
しいたけ1個 10g/0.1g
豚ヒレ肉 40g/0.1g
豆腐1/2丁 ―/2.5g
オリーブオイル大さじ1 ―/0.0g
果物は控えめに。おすすめはチョコレート
栗原先生は、読者世代の食生活に注意を促します。
「果物はGI値が低くても注意が必要です。GI値が低いバナナも、単糖類を含むため、直接肝臓へ運ばれて中性脂肪として蓄えられやすいのです。バナナは食後の高血糖は防げても、脂肪肝につながるので、脂肪肝の人は食べるのを控えましょう」
脂肪肝を改善するためには、果物や甘い飲み物、間食はしばらくやめましょう。
ご飯、パン、麺類といった炭水化物は1日10%減らすとよいそうです。
夕食時のご飯も、できれば半分に減らすのがコツ。
「間食をやめるのが難しい方は、高カカオチョコレート(カカオ含有量70%以上)ならば、脂肪がつきにくいのでおすすめです。1日25gまでならば大丈夫です」と栗原先生。
一方、脂肪を燃焼させるには、体でいちばん大きな太ももの筋肉を鍛えると効果的。
膝痛などを抱えている人は、いすに座ったままでもできる「もも上げ」体操がおすすめです。
正しい食事の見直しと筋トレで、脂肪肝を撃退しましょう!
《「GI 値」とは?》
食品を食べたときの、食後血糖値の上昇度合いを示したのが「GI値」です。ブドウ糖(グルコース)を100として、食パンは「95」といった値が表示されます。100に近ければ近いほど食後血糖値は上がりやすく糖質を多く含むことになるので注意しましょう。
【年代別1日の糖質摂取量】
出典/栗原毅・サッポロビール株式会社
「食習慣と糖に関する20~60代男女1000人の実態調査」(2015年)
50代の女性の糖質摂取量が多い理由は、うどんやサンドイッチなど、カロリーが低くて手軽に済ませられる食事への偏りや、健康のために食べている果物などが要因と考えられます。
脂肪肝を遠ざける生活習慣
●いすに座ったままできる「もも上げ」
①背筋を伸ばして座る
いすに座って背筋を伸ばし、姿勢を正すようにします。
↓
②両足を1回上げる
いすの端を両手で持って両足を上げ、太ももに力を入れます。
↓
③片足ずつ上げる
片足ずつリズミカルに上げ下げを1~3分間繰り返します。
●ちょこっとチョコレート
高カカオチョコレート(カカオ70%以上含有)は脂肪肝撃退の強い味方。1日25gまでを目安に。
●緑茶のカテキンが良い!
緑茶のカテキンは糖質の吸収を遅らせる作用が。脂肪を減らす働きもあるのでおすすめ。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史