冷たいものがしみる、といった歯のトラブルで悩まれている方はいませんか? それは「強すぎる歯みがき」が原因かもしれません。前作『毒出しうがい』がベストセラーとなった歯学博士・照山裕子さんの著書『歯科医が考案 毒出し歯みがき』(アスコム)より「健康的な歯みがきの方法」をご紹介します。
日本人の死亡原因の上位に入る病気の大半が歯周病と関係
歯周病が起こすもうひとつの大きなトラブルは、深刻な病気を引き起こすことです。
近年、医療従事者やオーラルケアメーカーが「歯周病が全身疾患を起こす」という啓発活動を行うなど、情報を発信することが増え、歯周病と病気の関係はよく知られるようになってきました。
しかし、まだまだ、歯周病を気にする人が少ないということは、正しい情報がいきわたっていないのだと思います。
日本人の死亡原因(2018年)は上から順に、がん、心疾患、老衰、脳血管疾患、肺炎です。
実は、この中で老衰以外、すべての病気に歯周病が関係しています。
なぜ全身の病気につながるかというと、歯周病菌は血管を通じて体内に侵入してくるからです。
歯周ポケットが深くなればなるほど、炎症を強める物質が増え、歯ぐきの血管から血液中に流れでていきます。
歯周ポケットは手のひらサイズの面積
たとえば親知らず以外の28本の歯がすべて歯周病で、深さ5ミリの歯周ポケットがある場合、ポケットの内側の面積はどれぐらいになると思いますか?
何と、約72平方センチメートル、大人の手のひらと同じぐらいの面積になるのです。
[歯周ポケットを広げてみると......]
親知らずをのぞく28 本の歯がすべて歯周病で、深さ5㎜の歯周ポケットができた場合、歯周ポケットの面積は約72平方センチメートル。大人の手のひらとほぼ同じ面積になるのです。
それぐらい歯周病が進行していると、歯ぐきから血がでるようになりますが、出血=毛細血管の破裂です。
歯周病を放置しておくことは、手のひら一面がズタズタに傷ついて出血しているところに、毎日「毒」を塗り込んでいるのと同じことだとおわかりいただけたでしょう。
そのようにして体内に浸入してきた歯周病菌や炎症物資は、体内の血管にも同じようにダメージを与え、動脈硬化などを引き起こします。
その結果、血栓によって血管が詰まって起こる心筋梗塞などの心疾患や、脳血管疾患のリスクが高まるのです。
また、歯周病菌はがんリスクを上げるともいわれています。
2018年に発表されたニューヨーク大学の研究では、歯周病菌の中でも特に悪さをするポルフィロモナス・ジンジバリス菌(P・g菌)の保菌者はすい臓がんの発症リスクが1・6倍、アグリゲイティバクター・アクチノマイセテムコミタンス(A・a菌)の保菌者は2・2倍高くなるというデータがでました。
また、タフツ大学などが行った共同研究によると、歯周病が重度の人は、軽度から歯周病でない人と比較して、がんの発症リスクが約24%高かったそうです。
最も高かったのは肺がんで、次が大腸がん。
このふたつは日本人の死亡原因となるがんの中でも1位と2位です(2017年)。
どのようなメカニズムがあるかはまだ解明されていませんが、歯周病を予防するにこしたことはありません。
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全6章にわたって、歯の健康を保つための「毒出し歯みがき」のやり方や、オーバーブラッシングの弊害などを一つひとつ丁寧に記した一冊