冷たいものがしみる、といった歯のトラブルで悩まれている方はいませんか? それは「強すぎる歯みがき」が原因かもしれません。前作『毒出しうがい』がベストセラーとなった歯学博士・照山裕子さんの著書『歯科医が考案 毒出し歯みがき』(アスコム)より「健康的な歯みがきの方法」をご紹介します。
歯のみがきすぎで歯を失う!?
8020運動(ハチマルニイマル運動・80歳になっても20本以上の歯を残すことを目標とした運動)により、正しい歯みがき方法や口腔ケアの知識が普及したため、近年では丈夫で立派な歯を残している高齢者も増えてきています。
しかし、過半数が達成したといっても、半数近くはまだ達成できていません。
また、しっかり歯をみがく人が増えたことで、別の問題も明るみに出てきました。
それは、「歯のみがきすぎ」です。
といっても、回数や長さのことではなく、強さです。
歯ブラシをグーで握って、シャカシャカシャカと盛大に音を立てて歯をみがいてはいませんか?
このような強すぎる歯みがきを、歯科ではオーバーブラッシングと呼んでいます。
オーバーブラッシングをしていると、歯ぐきが傷つき縮んできます。
すると、本来、露出していないはずの歯根部(歯の下の部分)が表にでてくる「歯ぐき下がり(歯肉退縮)」といわれる状態に。
歯ぐき下がりになると歯が伸びたようになり、見た目がよくなくなるだけでなく、露出した部分が虫歯になりやすくなります。
本来、歯ぐきに守られているはずの歯根部は、歯冠部(歯ぐきからでている部分)のようにエナメル質におおわれておらず、やわらかいからです。
このような歯ぐき下がりした部分の虫歯を専門用語では「根面う蝕」といい、近年では「大人虫歯」と呼ばれることも多くなっています。
●歯ぐき下がりは虫歯の原因に
オーバーブラッシングで歯ぐきが下がり、本来隠れているべき歯根部が露出すると「根面う蝕」という虫歯になりやすいので注意。歯が折れる原因にもなります。
また、35歳以上の成人の8割が罹患しているとされる歯周病によっても歯ぐきは下がります。
ちなみにエナメル質は人体でもっとも硬いとされる組織です。
エナメル質で守られているか、いないかで、ケアの方法は大きく変わってくるのです。
本来、永久歯は成熟したエナメル質に守られているため、大人は虫歯になりにくいものです。
ですから大人が虫歯で歯科にくるときは、大抵が子どもの頃に治療した虫歯(再発または治療がうまくいっていなくてやり直す)か、手入れの届かない隙間にできた虫歯、または根面う蝕です。
根面う蝕はやわらかいセメント質や象牙質から始まるため、しっかりケアしないと、見た目には大したことがなさそうでも、内部でどんどん進行していき、ある日突然ポキッと根元から折れてしまうことがあります。
歯を失う原因を作る歯みがきなど、本末転倒。
歯にとっては「毒」です。
強すぎる歯みがきは、歯のエナメル質が傷つく原因にもなります。
エナメル質が傷つく原因は歯ぎしりや食いしばりで歯に強い力がかかるとか、スポーツ飲料など酸性の飲み物を常飲していて溶けてしまうなど、さまざまなことが考えられますが、オーバーブラッシングもその一因です。
白い歯に憧れて研磨剤がたくさん入った歯みがき粉を使い、ゴシゴシとこまめに歯をみがいた結果、エナメル質が傷つき、歯がかえって着色しやすくなってしまう人もいます。
また、保険適応の前歯のかぶせ物などは表面がプラスチック製なので、エナメル質より弱く、歯と同じ強さでみがいてしまうと細かい傷が無数にでき、あっという間に変色します。
30歳以上になると2~3割の人はエナメル質に摩耗があるといわれています。
原因は人それぞれですが、オーバーブラッシングのようにすぐに改善できることはぜひ早急に対処していきましょう。
年を取っても「歯の健康」を保ちましょう。「毒出し歯みがき」その他の記事はこちら
全6章にわたって、歯の健康を保つための「毒出し歯みがき」のやり方や、オーバーブラッシングの弊害などを一つひとつ丁寧に記した一冊