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外反母趾は足の骨の変形ですが、軽度のうちは気付きにくいのが特徴です。体を支える足は、たくさんの骨で構成されて丈夫に作られています。そのため、足に意識を向けていないと変化を感じにくいのです。
「足は、かかと、第1指の付け根、第5指の付け根の3カ所を基点に、アーチ状になっていることで、力を分散してバネのような働きをしています。このアーチが崩れると、足のトラブルにつながってしまいます。しかし、多くの方は、その状態に気付いていないのです」と高山先生は指摘します。
アーチが崩れて足の指が広がってしまう「開張足」は、女性の約9割に見られます。ペタペタ歩くことがアーチの崩れをまねき、足の裏に体重や衝撃がダイレクトにかかるため、タコやウオノメができやすくなるのです。
長年の習慣が悪化する原因になる
「外反母趾は遺伝も関係するといわれていますが、足の使い方や靴の問題で生じることも多いのです。開張足は指が上手に使われていない状態にあることを 意味していますが、その状態で細い靴を履き続けると、まるでギブスをはめられたように靴の形に押されて曲がってしまうということもあります」
曲がって外側に飛び出した第1指の付け根の骨が、靴に当たって「痛い」と感じることがあっても、「単なる靴ずれ」と考えて放置されがちです。指を適切に使って歩かないことで、どんどん指の動きが悪くなり、骨を束ねている腱や動きをサポー トしている筋肉が衰えてしまうため、特に押される方向への指の変形がより進んでしまいます。指の骨の変形は第1指だけにとどまりません。第5指も変形し、第1指方向へと曲がっていきます。これを「内反小趾」といいます。
「内反小趾は、開張足や外反母趾と合併することが多く、親指の骨と小指の骨がそれぞれ内側に曲がり、人さし指や中指、薬指が、親指と小指に押しつぶされたような状態にもなります。小指は親指よりも使われにくく、また骨の大きさも小さいため、外反母趾以上に靴の影響を受けて内側に曲がりやすいのです。重度になると薬指の下に潜り込むように変形してしまうこともあるのです」
外反母趾の重症度をチェックしよう!
足の第1(親指)の付け根の関節は、もともと少し体の外側に曲がっています。その角度が15度未満ならば正常な範囲。15度以上になると外反母趾と診断されます。40度以上の重度では、足の第1指が第2指の上に乗ったり、逆に下に潜り込んだりすることも。変形が完成すると矯正で元に戻すのが難しくなります。
構成/高谷優一 取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史
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高山かおる(たかやま・かおる)先生
医師。専門は、接触皮膚炎、フットケア、美容。埼玉県済生会川口総合病院、東京医科歯科大学附属病院勤務。フットケアの啓発活動を行う「足育研究会」代表。著書に『巻き爪、陥入爪、外反母趾の特効セルフケア』(マキノ出版)など。