糖尿病や高血圧、心筋梗塞に脳梗塞...こういった怖い病気の原因が、実は「食べすぎ」にあることをご存知でしょうか。「"ちょい空腹"が体にさまざまなメリットをもたらす」と提唱する医学博士・石原結實さんは、これら「食べすぎ病」の蔓延に警鐘を鳴らしています。そこで、石原さんの著書『やせる、若返る、病気にならない ちょい空腹がもたらす すごい力』(ワニブックス)から、人生100年時代を健康に過ごすための「食べすぎない技術」を連載形式でお届けします。
空腹になるとガン細胞が自殺していく!?
1975(昭和50)年時点のガン死者数と医師数は、同数の約13万人でした。
そして、今や医師数は32万人と増加し、この40年間でガンに関する研究や治療法は格段に進歩した......とされているのに、2018(平成30)年のガン死者数は38万人と激増しています。
1960年代に、ドイツのガン学者イセルス博士は、動物実験の結果、「食べたいだけの量の食物を与えられて育ったネズミは、2日おきに断食させられたネズミよりも自然発生するガンが5・3倍も高い」と発表しています。
また、カリフォルニア大学、バークレー校のマーク・ヘラースタイン博士は、
「断食すると体内の細胞に抗ガン効果をもたらす」
「1日おきにネズミを断食させたところ、体細胞の分裂する速度が確実に減る」
「細胞分裂自体が遅くなれば、ガン発生の危険性を減らすことができる」
ことを実験で証明し、さらに「成長ホルモンやインスリン(たくさん食べるほど、すい臓のβ-細胞より分泌される)のような〝細胞の成長を促す〟ホルモンは、大食すると分泌が盛んになり、ガン細胞の増殖のプロセスに深くかかわる」と述べています。
これを踏まえると、日本人の死因のダントツ1位のガンは「食べすぎ病」と言っても過言ではありません。
日本でも大阪府立大学農学部の中野長久教授らが、150匹のマウスを50匹ずつ
(1)食事制限なし
(2)食事を80%程度に制限する
(3)食事を60%程度に制限する
の3つのグループに分けて飼育する実験をしました。
5週目にすべてのマウスの腹部にガン細胞を注入したところ、
(1)(2)のグループ......ガン細胞注入後2~3週間で腹部に平均約11gの腫瘍ができ、4週目にはほとんどのマウスが死亡。
(3)のグループ......ガン細胞注入後2~3週間で約7gの腫瘍ができたが、ほとんどのマウスが7週間目まで生存した。
という結果が得られました。
さらに、ニューヨークのマウントサイナイ医大のグロス教授は、
「ある量の放射線を満腹ネズミに照射したところ、100%のネズミが発ガンしたのに対し、腹五分程度の空腹ネズミに同量の放射線を照射しても、わずか0・7%しか発ガンしなかった」
という実験結果を発表しています。
アメリカのエモリー大学病院のS・ハイムスフィールド博士が「平均年齢50歳で同じ程度の進行ガン患者を無作為に抽出して、
A群(50人)......病院の普通食
B群(50人)......特別の栄養素を存分に入れたスープを加えた栄養食
を与えたところ、
A群の平均生存日数=300日
B群の平均生存日数=75日
という結果になったことを発表しました。
ガンは別名、悪性新生物(malignant neoplasm)と言われます。
「生物=生きもの」なのだから、成長・増殖するためには栄養が必要なのです。
よって、食べすぎるとガン細胞の増殖を促すことになります。
我々の体の中では、実は毎日約5000個のガン細胞が発生しています。
それを固まり(ガン腫)にしないように、ガン細胞を攻撃してくれているのが、白血球のNK細胞やマクロファージです。
しかし、小さいガン腫ができた時でも「空腹(断食)や発熱により、ガン細胞は自殺する」と言われています。
この「ガン細胞の自殺」を、医学用語でアポトーシス(Apotosis)と言います。
つまり、空腹(断食)によってこのアポトーシスを促すことができるというわけです。
ガン患者が食欲不振に陥るのは、ガン細胞の増殖を抑えて、少しでも延命をはかろうとする「本能の反応」に他ならないといえます。