96歳の作家が「現役で書き続ける」秘訣とは?/佐藤愛子さんインタビュー(1)

新しい時代・令和も元気に活躍されている90代の皆さん。
お生まれになったのは、大正や昭和一桁の時代です。
大正から昭和、平成、そして令和へとーー。数多くの経験に基づいたお話は参考にしたいことばかり。今回は、大正12年生まれ、作家の佐藤愛子さんに、いくつになっても日々はつらつと暮らすための考え方を伺いました。

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「仕事があると元気になる。
まだまだ、世の中には文句を言いたいですね」

96歳 佐藤愛子(さとう・あいこ)さん

1923年大阪府生まれ。69年『戦いすんで日が暮れて』で直木賞、79年『幸福の絵』で女流文学賞、2000年『血脈』で菊池寛賞、15年 『晩鐘』で紫式部文学賞受賞。17年に旭日小綬章を受章し、エッセイ集『九十歳。何がめでたい』が大ベストセラーに。近著は『冥界からの電話」。

5月に九死に一生。
いまは無理せず、マイペースで

3年連続で『毎日が発見』の新春号に登場いただいている作家の佐藤愛子さん。ご自宅を訪ねると、今年も元気に出迎えてくれました。背筋がスッと伸び、颯爽と歩く姿は、とても96歳とは思えません。

「私は子どもの頃から鳩胸で、反り返った体形だったから、背中が丸くなってきたくらいが、ちょうどいいの(笑)。足腰が丈夫なのは、せっかちだから。昔から大股、速足で歩いてきたから鍛えられたんですよ」

さらりとユーモアで切り返す佐藤さんですが、この1年の間には、九死に一生という経験をしたそうです。

「5月に、ある編集者から電話があり、私の悪筆が読めないというので、『ちょっと待ってください。原稿を持ってきますから』と答えた瞬間に、意識が飛んで、ドーンと転んだ。どうやって転んだか、全く覚えていないんです。意識が戻って「いま、転んだので電話切ります」と伝えたけれど、体は動かない。娘は2階にいるから気付かない。翌朝お手伝いさんが来るまで床に転がっているのかと思っていたら、ちょっと足が動いた。なんとか階段の下まで這っていったら、運良く娘に声が届いて助かったんです。

骨は折れていないようなので、寝ていれば治るだろうと病院にも行きませんでしたが、翌日はしたたかに打った左側全体が紫色。顔はお岩さん。鏡を見ながら、「今日は紫、今日は赤」と楽しんでいましたが、この年で寝込むと体力が落ちますね。主治医から「今年の夏は酷暑だから、無理をしてでも北海道へ行きなさい」とアドバイスをされ、9月中旬まで北海道の別荘で過ごして、ようやく元気になりました」

90歳までは病気知らずだったという佐藤さん。ところが2016年に上梓したエッセイ集『九十歳。何がめでたい』が大ベストセラーとなり、その後は超多忙な日々に...。

「あの本のヒットがいけなかったですね(笑)。90代の声を聞いてから忙し過ぎて、体のあちこちに故障が出るようになった。お医者へ行くと老化現象だと言われるだけでね、これはもう、仕方がない。肉体的にダメになってきたということは分かります。すると精神力も弱ってくる。

肉体と精神は別ものだと思っていましたが、連動しているんですね。考える力や感じる力が衰え、言葉が浮かばなくなってきた。自分で書いた文章が気に入らなくて、書き直してばかり。ヘタっぴーになったなあと思いますよ(笑)。

それでも、仕事があると元気になる。今日はエッセイを書こう、今日はインタビューがある、対談があるという日は、気分良く起きられます。やることがあるのがいいんです」

よく、健康長寿のためには、自分の役割や仕事を持つことが大切といわれますが、佐藤さんにしても同じ。

娘さんと同居していても生活は別々。仕事も含めた日々のスケジュール管理を自分で行い、朝7時半に起床し、自分で料理をして食事をし、夜はニュースを見て12時から1時には就寝するという自分のペースを崩さない生活が、90代現役の秘訣のようです。

「娘家族とは食事の時間も違うので、無理に合わせたらお互いにストレスをためるだけ。無理はしません。いま、やりたくないのにやっているのは、血圧を朝晩測ってグラフに付けることぐらい。主治医の言いつけなので、仕方なくやっています。あとは成り行きまかせ。死なないから生きているようなものですよ。ただ、恨みつらみ、心残りが魂に染み込んだまま死ぬと、成仏できずにウロウロすることになるので、心残りがないように生きたいと思ってますけれどもね」

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佐藤愛子(さとう・あいこ)さん

1923年大阪府生まれ。69年『戦いすんで日が暮れて』で直木賞、79年『幸福の絵』で女流文学賞、2000年『血脈』で菊池寛賞、15年 『晩鐘』で紫式部文学賞受賞。17年に旭日小綬章を受章し、エッセイ集『九十歳。何がめでたい』が大ベストセラーに。近著は『冥界からの電話」。

この記事は『毎日が発見』2020年1月号に掲載の情報です。

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