インフルエンザや風邪の予防、生活習慣病のリスク低下、さらには美容にもいい「飲み物」があるのをご存じでしょうか。それは普段から飲まれる方も多い「紅茶」です。「13の効能がある」という紅茶のスペシャリスト・斉藤由美さんがまとめた著書『紅茶セラピー 世界で愛される自然の万能薬』(ワニブックス)から、健康のために取り入れたい「紅茶のレシピと飲み方」を連載形式でお届けします。
ベジタブルファースト・ウィズ・ティーで体をこげつかせない
日本は、飲料の種類が豊富で、ペットボトル飲料や缶飲料も次から次へと新たな商品が登場します。
外食シーンでも選択肢が実に多いので、いつも紅茶にしようと決めていても、あれこれ目移りしてしまい、きっと迷ってしまうことでしょう。
また、イメージ的にも紅茶というと、ケーキと一緒に午後のティータイムという先入観に支配されがちな飲み物でもあります。
ですから、日本においては紅茶を飲むシーンが限定されがちなことは否めません。
もしもこの紅茶に、食事中に飲むことで、健康にプラスになる効果があるとしたら、いかがでしょうか。
そんな朗報が、いくつかの研究によって報告されているのです。
その中で注目されているのが、紅茶による食後の血糖値上昇抑制効果です。
血糖値とは、血液中の「グルコース」(ブドウ糖)の濃度を表す数値のこと。
Chapter3で登場したグリコーゲンと名前が似ていますが、グリコーゲンは、複数のグルコースが結びついた物質です。
私たちが食事をすると、一時的に血糖値が上がります。
すると「インスリン」というホルモンが分泌され、平常値に戻すよう指令が出されます。
血糖値は食事の内容や体調によっても変化し、高い状態が続くと体に悪影響を及ぼし、糖尿病をはじめとする生活習慣病のリスクが高まるのです。
食事のとき、食べる順番を考えて、できるだけ野菜から食べるようにしましょうという話を聞いたことはありませんか?
これは、野菜を最初に食べることで、食後の血糖値上昇がゆるやかになることがわかっているからです。
どんなにお腹が空いていても、どんぶりご飯からガツガツと食べてしまっては、血糖値が急激に上昇するためよくありません。
「食事はベジタブルファーストで」というキャッチフレーズがあるほどです。
そしてここに紅茶が加わると、さらによいことがわかりました。
紅茶を飲みながら食事をすると、食後の血糖値上昇を抑えることができるのです。
「ベジタブルファースト・ウィズ・ティー」。
今日からは、食事のメニューに紅茶も加えてみましょう。
食後ではなく、食前、食中に水感覚で飲むことをおすすめします。
セットドリンクのタイミングは食後派が多いように見受けられますが、血糖値上昇を抑える効果を狙うなら、食前に出してもらいましょう。
さて、ほかにも食事中に紅茶を一緒に飲むとよい事例があります。
それは、血管の健康に関する研究で明らかにされました。
ハンバーガーやステーキなどのような、こってりとした脂肪分の高い食事は、血管内皮(血管の内側の皮)の損傷リスクが高いといわれていました。
しかし、このような高脂肪食と一緒に紅茶を飲むことで、血管内皮損傷リスクが軽減されることがわかったのです。
たとえば筋肉を鍛えるなら筋トレをすればいいですが、血管は、そんなふうに鍛えることができません。
なにより目に見えず感じにくいですよね。
だからこそ、「血管の健康」を保つためには食生活が重要になるわけです。
食生活の重要性というと、ダイエットや肌の状態などのように表面上わかりやすいことにしか目がいかなくなってしまいがちです。
見えるからわかりやすいともいえますけど。
でも、命を育む体の細部に染み渡るものこそが、毎日の食事の質によって大きく変わってきて、結局は「見えるからわかりやすい」ところにも影響を及ぼすことになるのだと思います。
食後のデザートやティータイムのお供だけの紅茶からは卒業です。
これからは、「食事と一緒に紅茶」の時代。
もちろん、食後のデザートと一緒に、ティータイムにケーキと一緒に、も健在です。
だって、紅茶って本当にたくさんの種類があって、好みや食べ物によっていろいろ選べるのですから。
そんなことを考え、楽しみながら暮らすというのが、私にとって人生の醍醐味なのかもしれません。
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