「のど」は、呼吸、飲み込み、発声という3つの重要な役割を果たしており、私たちが生きていく上で不可欠な器官です。
同時に、外部から空気や食べ物を取り込む「のど」は、病原菌を遮る第一関門でもあります。
「長生きしたければ、のどを鍛えましょう」と話す池袋大谷クリニックの大谷義夫先生に、シニア世代で「たん」が出たときの注意点を教えてもらいました。
症状が進むと亡くなることも...
たんからはさまざまな病気の兆候が読み取れますが、特にシニア世代が覚えておきたい病気が、発症すると完治が難しい「気管支ぜんそく」と、中高年女性に多く発症する「肺マック症」です。
どちらの病気も原因が特定できない場合も多いですが、高齢での発症も多いので、主な原因や症状を覚えておくとよいでしょう。
年間に1,000人以上が亡くなる気管支の病気「気管支ぜんそく」
成人の6~10%が罹患(りかん)し、高年齢での発症も多い病気です。
アレルギー疾患の増加などがその理由ですが、原因物質が特定できない場合も。
せきぜんそくの約30%が気管支ぜんそくへと悪化するので注意しましょう。
■主な原因
ほこり、ペットの毛、気温差、かぜなどのウイルス感染による気道への刺激。
疲労やストレス、睡眠不足から起こることもある。
■主な症状
気道が狭くなって呼吸が苦しくなり、たんが増え、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という喘ぜん鳴めいが起きる。
夜間や早朝に出やすいのも特徴。
■主な治療法
吸入ステロイド薬を日々使用し、発作が起きないように日常的に予防する方法が基本。
発作時は即効性のある気管支拡張薬を吸入する。
気道の状態
症状(発作)がないときでも気道粘膜に炎症が起こり、むくんでいます。
気道がさらに狭くなり、たんが増え、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった喘鳴が起きます。
やせ型の中高年女性に多いが原因はいまだ不明「肺マック症」(非結核性抗酸菌症)
庭の土や浴室など、どこにでも普通に生息する細菌「マック菌」を吸い込むことによる感染症です。
年間約8,000人が発症し、「肺結核は減少傾向であるのに対し、肺マック症は増加しています」(大谷先生)。
■主な原因
結核菌以外の抗酸菌、非結核性抗酸菌の一つである「マック菌」が肺に感染して発症。
ただし、詳細な原因はまだ解明されていない。
■主な症状
せき、たん、だるさ、発熱などかぜに似た症状のほか、血痰、寝汗、体重減少など。
数年から10年以上かけてゆっくりと進行する。
■主な治療法
特効薬はないが、抗生物質(クラリスロマイシン、エタンブトールなど)3~4種を服用。
最低でも3年ほどの服用が必要となる。
気管支拡張症から併発することもあります
気管支拡張症は、気管支の一部が壊れて広がる病気。
詳しい原因は解明されていません。
拡張した部分にたんがたまったり、細菌やカビが増殖して炎症を起こしたりし、肺マック症などの感染症を併発しやすくなります。
構成・取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/中川原 透