自分の体が思うようにならない...、そんな違和感がありませんか? 女性は特に40代以降、更年期や閉経という新しいモードに入っていく過程で、なんらかのトラブルはつきものです。そこで、『マリ先生の健康教室 オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(常喜眞理/すばる舎)より、女性家庭医である著者が提案する、それぞれの年代で起こる女性の体の変化への「上手な対応策」を、連載形式でお届けします。
ストップ! フレイルサイクル"食べる力"を失わないで
60代で注意したい筋力低下のスパイラル「ロコモティブシンドローム」がありますが、実はこれには続きがあります。活動量が落ちることによる食欲不振と低栄養状態です。
ロコモにより活動量が低下するせいでお腹が減らず、食事量が低下。慢性的な低栄養状態となり、さらに筋肉が落ちていく.........まさに悪循環ですね。
「フレイル(虚弱)サイクル」と呼ばれるもので、このサイクルに落ち込むと、みるみる体力が失われていきます。要するに、見た目も体の中身も急速に老け込みます。
さまざまな病気を引き起こすとともに、まさに本格的な「寝たきり」への第一歩となる、と言っても過言ではありません。
70代からは動ける体に加えて、食べられる体でいられるかが重要です。70代のキーワードは「しっかり食べる」です。
加齢により食が細くなるのは、ある程度は仕方がないのですが、この年代からは過度の肥満は別として、決して痩せないことも重要になってきます。
痩せることで骨折もしやすくなりますし、手足だけでなく飲み込む(嚥下)筋肉も落ちることから、誤嚥性肺炎のリスクも高まってしまいます。
ですから、「歯周病」のページでも述べましたが、口腔の健康を保つこと、美味しく自分の歯で食べられることは、この年代に至ってはことさら重要になってきます。
しっかり食べ続けることは意外に難しい
食べるためには、動いて空腹を感じなければなりません。そして動く体力を保つためには、食べなければいけません。
卵とニワトリのような関係ですが、「じゃあ、頑張って動きましょう」で済むほど、ことは簡単ではありません。
この年頃になると、活動量の低下だけでなく、味覚や嗅覚のおとろえから食への興味を失うこともあります。歯や歯ぐきにトラブルがあればなおさらです。
食べるにしても、そこにモチベーションが湧かなければ長続きしないものです。漠然とした「健康」目的では、食べることはついおろそかになってしまいます。
要するに精神的にも肉体的にも"楽しく"食べられるか。
それは個人の生き方にもかかわることであり、医学ではままならない世界に入っていかざるを得ません。ただの医者にすぎない私では力不足かと思いますが、なんとか対策を後述したいと思います。
認知症ときちんと向き合う。水分補給も意識的に
このほか、早い人では40~50代から始まっているのですが、「物忘れ」ということも、頻繁に起こるでしょう。
物忘れと認知症は、実はなだらかな坂のようにつながっています。
そして認知症は、多かれ少なかれ、誰もがなるものでもあります。ここは大らかに対応する度量を備えたいものです。もちろん私自身も他人事ではありません。
また、身近な問題で言えば、70代にもなれば水分を体に溜めておく力もかなりおとろえています。自分の"渇き"にも気づきにくくなっており、熱中症になるケースが増えます。
この歳になると単なる「暑気あたり」では済まず、そのまま心筋梗塞などにもつながることがあります。夏はもちろんのこと、1年をとおして水分補給に気を配りたいところです。
体は少しずつ窮屈になってくるかもしれませんが、あきらめずに、いたわる心をいつまでも忘れないでください。
そして、人生を楽しむことを忘れないでください。
イラスト/加藤陽子
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