「骨粗鬆症」(こつそしょうしょう)は、骨の強度が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。転倒して手をついたり、くしゃみをしたり、ささいなことで骨折することがあります。
今回は、原宿リハビリテーション病院名誉院長の林 泰史先生に「骨を強くする栄養素」について教えてもらいました。
カルシウム+ビタミンで骨密度と骨質を保ちましょう
骨折のリスクを下げるためには、骨密度と骨質の両方を低下させないことが大切ですが、カルシウムやコラーゲンだけを摂ればいいわけではありません。
例えば、コラーゲンは皮膚、肌、筋肉、関節などにも必要な成分で、体内に入ると体が自動的に調節して各部位に必要な量を分配します。
必ずしも骨にだけ行き渡るわけではないのです。また、カルシウムは骨の主成分ですが、吸収されにくい栄養素で、成人の吸収率は30%程度ともいわれています。
「ビタミンなどの栄養素が不足すると、骨の量が少なくなって骨密度が低下するほか、骨質の劣化も起こります。カルシウムに合わせ、ビタミンK、ビタミンDの"ゴールデン・トライアングル"の栄養素を意識して、バランスの良い食事を取りましょう」(林先生)。
コラーゲンは通常の食事でたんぱく質をきちんと摂っていれば、十分に摂取することができるそうです。
骨を強くする3つの栄養素をバランスよく摂りましょう
※μgはマイクログラム。1μgは100万分の1g
カルシウム/1日の摂取推奨量650㎎
骨の主成分となる栄養素。1 日の摂取推奨量は50 歳以上の女性で650㎎(2015年版 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」より。以下同)。
乳製品、小魚、干しエビ、小松菜、チンゲン菜、大豆製品、海藻などに多く含まれます。牛乳1 杯(200ml)で約220㎎。ビタミンDと一緒に摂ると吸収が良くなります。
[主な食品]
・海藻
・牛乳
・干しエビ
・大豆製品
ビタミンD/1日の摂取目安量5.5μg
カルシウムの吸収を促す栄養素。2000年にドイツで「血液中にビタミンDが多い人はふらつきが少ない」という研究結果が発表され、きちんと摂っていると転倒や骨折につながりにくいと考えられています。
きのこ類や魚などに多く、しらす干し10gで約6μgを摂取できます。
■主な食品
・きのこ類
・しらす干し
・魚
ビタミンK/1日の摂取目安量150μg
骨を形成する柱となるコラーゲンと、その周囲に付いているカルシウムを沈着させて骨を丈夫にします。「1日の摂取目安量は150μgですが、骨粗鬆症予防には250μgの摂取を」(林先生)。ブロッコリーや小松菜のほか、特に納豆がおすすめで、1 パック(40g)で240μgを摂取可能。
■主な食品
・納豆
・ブロッコリー
・小松菜
さらに! 酢やレモンもカルシウムの吸収を促します
酢に含まれる酢酸、レモンやゆずに含まれるクエン酸には、体内に吸収されにくいカルシウムの分解(イオン化)を助け、吸収を促す働きがあります。
カルシウムを多く含む小魚は酢やレモンを使った南蛮漬けやマリネにすると、カルシウムの摂取量が多くなります。また、ヨーグルトや牛乳にフルーツ黒酢を合わせるのもおすすめです。
取材・文/岡田知子(BLOOM) 写真/PIXTA イラスト/やまだやすこ