40代以上の3人に1人が経験するとされる「尿もれ」。デリケートな問題なので、誰にも相談できない人も少なくないようです。そこで、排尿トラブル治療の第一人者・山西友典医師が監修した『尿トレ:誰にも言えない尿のトラブル「スッキリ解消! 」ブック』(方丈社)から、同書をまとめた取材班が知った「尿トラブルの仕組み」と解消法となるトレーニング「尿トレ」のヒントを連載形式でお届けします。
まずは受診!そのための予備知識
排尿のトラブルはいくつかの原因が重なり、いくつかの症状や病気が複合的に起きている可能性もあるので、トラブルを感じたらまず受診をして、医師の診察、基本的な検査(尿検査、残尿量測定、エコー検査、血液検査など)を受けることが大切です。
健康な排尿をめざすセルフケアとそのモチベーションアップ、QOL(生活の質)の向上のため、専門の医療機関への受診とセルフケアにつなげることを目的に、症状や病気の説明は、中高年以降ごく身近なものに限り、簡単にご紹介します。
すでにトラブルを感じている人は、ざっと目を通して、ひとつの症状にいろいろな原因が考えられることなどを感じていただき、ぜひ「自己診断NG」に納得して、病院へ行ってください。予防的に尿トレをする方は、排尿の健康チェックに活用を!
排尿トラブルは大きく分けて次の3つに分類されます。
蓄尿症状 膀胱に尿をためる機能に問題が生じて起こる(※5)
〈トイレが近い〉
・昼間の頻尿 昼間、8回以上トイレに行く症状。
・夜間の頻尿 夜中に1回以上、トイレに行くために起きる症状。
昼夜ともに症状が見られることもあります。過活動膀胱やさまざまな病気によって起こることがあります。心因性の頻尿(神経性頻尿)もあります。
〈尿意が強い〉
・尿意切迫感
急にトイレに行きたくなり、がまんすることができません。過活動膀胱の代表的な症状です。生活シーン上、トイレに行きたいと思っても、がまんしなければならないタイミングでしばらくがまんできれば、問題はありません。
〈尿がもれる、失禁〉
・切迫性尿失禁
尿がたまっていないのに、強い尿意ががまんできず、トイレに間に合わなくて尿がもれてしまいます。過活動膀胱で見られることもある症状です。冷たい水を使ったときや水の音を聞いたときに起こることもあります。
・腹圧性尿失禁
くしゃみや咳をしたとき、笑ったとき、重い物を持ち上げたり、運動をしたときに尿がもれてしまう症状です。
・混合性尿失禁
先述の「切迫性尿失禁」と「腹圧性尿失禁」が混合しているタイプです。
・溢流性尿失禁
尿を出したいのに出せず、しかし、尿が少しずつもれてしまう症状です。前提に、尿が出にくくなる「排尿症状」が必ずあります。原因となる代表的な病気として前立腺肥大症があるため男性に多いとされてきましたが、昨今は糖尿病などから起こることも多く、一概に言えません。膀胱周辺のがんの手術後などに神経の機能が低下して起こる場合もあります。
・機能性尿失禁
排尿機能は正常であるものの、身体運動機能の低下や認知症によって起こる尿失禁です。歩けない、服を脱ぎ着するのに手間がかかるなどでトイレに間に合わない、あるいは認知症のためにトイレの場所や使い方がわからず失禁してしまうなどのケースです。治療とともに、介護や生活環境の見直しも必要になります。
排尿症状 尿を排出する機能に問題が生じて起こる
〈尿の勢いがない、尿が途中で止まる、なかなか出ない、少ない〉
・排尿障害
過活動膀胱や前立腺肥大症のほか、腎臓など泌尿器の病気、排泄に関わる神経や筋肉の障害が原因で起こることも。
排尿後症状 排尿した後の不快感や不快な症状
・残尿感
排尿した後も膀胱が空になっていない感覚がある症状。主に「排尿症状」によって起こります。排尿後、基本的に膀胱は空になり、残尿はないものですが、いろいろな原因で加齢とともに残尿は増え、ただし100ml以下の残尿はあっても健康に影響はないとされています。そして実際には残尿がなくても、残尿感がある場合もあります。膀胱炎、排泄に関わる神経や筋肉の障害で多く見られます。
・排尿後尿滴下
排尿を終えて、便器から離れた後(男性)、または立ち上がった後(女性)、意図せず尿がもれる症状。尿道の長い男性に多いです。女性は、抑えるように拭き、心配ならもれる量に合わせたパッドで対応を。
男女とも骨盤底筋群(膀胱を支えている筋肉)を鍛えるなど、尿トレで改善をめざしましょう。
※5 蓄尿症状の失禁には、反射性尿失禁と尿道外尿失禁も別にあります。反射性尿失禁は、交通事故などによる脊髄損傷にともなってみられるタイプ。尿意がわからず、知らない間に尿が出てしまいます。一方、尿道外尿失禁とは、尿管や膀胱から膣に尿がもれてしまう症状。後天的に起こるケースは産婦人科系手術後や、子宮や骨盤内の悪性腫瘍の放射線治療などが原因である場合が多いです。
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