40代以上の3人に1人が経験するとされる「尿もれ」。デリケートな問題なので、誰にも相談できない人も少なくないようです。そこで、排尿トラブル治療の第一人者・山西友典医師が監修した『尿トレ:誰にも言えない尿のトラブル「スッキリ解消! 」ブック』(方丈社)から、同書をまとめた取材班が知った「尿トラブルの仕組み」と解消法となるトレーニング「尿トレ」のヒントを連載形式でお届けします。
年のせいとあきらめない
排尿トラブルについて取材や勉強を始めたものの、あろうことか早々につまずきを感じました。排尿のトラブルの症状や原因は、実に多様で、素人が理解するには複雑なのです!
最近、テレビコマーシャルなどのおかげで一般的によく知られている「過活動膀胱」も、年のせいで起こる症状とは限らなくて、原因が多様で、男女差もあります。
そして排尿のトラブルの中には、過活動膀胱とよく似た症状が腎臓など泌尿器の病気や障害によって起きる場合や、生活習慣病や他の臓器の病気の前兆として起きる場合もあり、それらが同時に起きている場合もあるというのです。
原因が違えば当然、治療や対処は異なることがあります。
自己診断で、"年のせい"と割り切ったり、あきらめるのはNG。自分や家族のトラブルについて、原因をはっきりさせることが肝腎です。排尿トラブルについてよく理解してからというのでは、最適な受診のタイミングを逸してしまう危険もあると感じました。病院へ行って、原因を突き止めましょう。
排尿のトラブルは、自分が生活の中で「困った」と感じ、トイレのことで「外出できない」「眠れない」などと思う時点でトラブルです。
それが健康上の問題がある状態なのか、原因が何なのかは専門医でなければ判断できません。
すでに何らかのトラブルや不安がある方は、善は急げ。原因が病気だとわかれば治療ができ、加齢による変化ならトラブルを軽減する尿トレに取り組むことで困りごとを軽減・解消できます。
気がつくと「人生100年時代」と言われています。つい先日まで80年とされていたのに、また20年も延びて、私たち中高年の"これから"は長い!
老化だからしかたがないなどとあきらめて困りごとに耐えて暮らすのはもったいない。そう考える人が増え、治療できることだと啓発も広がっているためでしょうか、受診率は増えているとのこと。
患者の中には、何年もの間、解決できない悩みとして「頻尿とスッキリ出せない感があり、いつもトイレのことや尿もれ対策で頭がいっぱいだった」などという人が、専門医の診断を受け、原因がわかり、治療が始まるとともに生活上の対処法も教わって、途端に生活が激変したなどのケースも数多くあるようです(※3)。
病院へ行く場合、山西友典先生のいらっしゃる「排泄機能センター」のような名称の科は排尿トラブルの専門科だとわかりやすいですが、一般的な受診先は「泌尿器科」となります。女性の場合は、まず「女性外来」のような診療科でもOKです。
治療と併せて行う生活改善について詳しい皮膚・排泄ケア認定看護師の資格をもつナースが勤務している医療機関もあります(※4)。
ちょっとしたトラブルの経験はあったが一過性の症状だった。現在まだトラブルはないが予防的に。そのような気持ちで尿トレしたい人は、誰にとっても"害"はない生活習慣改善なので、すぐにも始めていただけます。
ただし、排泄ケア専門の看護師・西村かおるさんにうかがったところ、「軽い症状を感じて、予防的に病院を受診する人も増えています。
50、60代の女性が多く、早期に受診すれば受診回数が少なくてすみ、早く改善するケースが多いでしょう。
一方、現役世代の男性は仕事で忙しくて予防的に病院に来る人は少ないようです。男性には『前立腺』という男性特有の臓器があり、中高年以降、前立腺の病気が原因の排尿トラブルを起こす人は多いので、生活の中でトラブルを感じたら、病気の早期発見・早期治療のために病院を受診しましょう。
50歳になったら(近親者に前立腺がんの人がいる場合は40歳代も)一度は前立腺がん等の検査を受けることが推奨されています。
排尿トラブルや悩みから解放されれば、よりアクティブに働け、夜はゆっくり休めるようになりますよ。
ですから、一過性でもトラブルの経験・実感があれば、その原因が特別な病気ではないのを確かめる用心をしてもいいのかもしれません。
※3 失禁体験者が自ら綴った『体験者が語る 失禁コントロールガイド』(日本コンチネンス協会編著、保健同人社刊)を読みました。絶版になっている本ですが、図書館で借りることができました。
※4 皮膚・排泄ケア認定看護師の資格をもつナースが勤務している身近な医療機関は公益社団法人日本看護協会ウェブサイトで検索できます。
46の「尿トレ」方法を徹底解説。漏れてしまう不安を解消できて、心も体も元気になれます