放置すると命に関わるものも!「鼻の炎症」がもたらす病気とは

「咳が1週間くらい長引いても自然に治るのを待つ」というあなた。放置していると全身に悪影響を及ぼすかもしれません。毎月2000人以上の患者を治療してきた呼吸器の名医・杉原徳彦先生は、実は悪さをしているのは「のどではなく鼻の奥」と言います。そこで、杉原先生の新刊『つらいせきが続いたら鼻の炎症を治しなさい』(あさ出版)から、「長引く咳」の正体から治療法までを毎日9:30に連載形式でお届けします。

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ぜんそくだけじゃない!鼻の炎症がもたらすさまざまな病気

咳ぜんそくや気管支ぜんそくの治療の一環として、鼻の炎症の治療も行うようになってから強く意識するようになったことがあります。

慢性副鼻腔炎は、放っておくと「万病のもと」になる、ということです。

「風邪は万病のもと」という言葉がありますが、私からすると、「副鼻腔炎」のほうが、はるかにその可能性が高いと思います。

アレルギー性鼻炎と慢性副鼻腔炎の合併率が約3割ということから考えると、アレルギー性鼻炎でも同じことがいえるでしょう。

●放っておくと命にかかわる「睡眠時無呼吸症候群」

副鼻腔炎をもつ人が発症しやすい病気の中で、とくに注意が必要なのが、「睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)」です。

この病気は、睡眠中に無呼吸やイビキをくり返し、著しく睡眠の質が低下する睡眠障害の1つです。睡眠が浅くなるため、朝起きたときに頭痛や気だるさを感じたり、日中に強い眠気を感じたりします。

こうした症状だけでもつらいのですが、睡眠中にしばしば酸欠状態になっているので、体や脳へも大きなストレスがかかります。

そのため、高血圧や糖尿病などの原因にもなりかねず、さらに不整脈や心不全、心筋症などの心疾患や、脳卒中などの脳疾患の危険性が高まることが明らかになっています。

つまり、睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、命にかかわる病気になるリスクがあるのです。逆に、治療をすることで突然死のリスクを減らせることも、さまざまな研究により明らかになっています。実際、かつては、睡眠時無呼吸症候群は呼吸器科、耳鼻咽喉科が検査・治療を行っていましたが、近年は循環器科が検査・治療を行うことが多くなってきています。

発症原因としては、肥満が広く知られており、睡眠時の「口呼吸」がイビキや無呼吸を引き起こしやすくなることが近年、指摘されています。

しかし、東洋人は欧米人よりも顎の骨格が小さいため、太っていなくても口呼吸になる人が多いといわれています。

鼻の疾患をもっていると、鼻が詰まっているなどの理由で、口呼吸になりがちです。つまり、鼻の疾患をもっていることも、睡眠時無呼吸症候群を発症するリスクをぐっと高めるのです。

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●「副鼻腔炎」をもつ喫煙者はCOPDになりやすい

また、副鼻腔炎をもっている人は、「慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん-以下、COPD)」にもなりやすいといわれています。COPDは、慢性的に肺に炎症が起こることで徐々に呼吸機能が低下し、進行すると呼吸困難になる疾患です。

当院を受診されているCOPDの患者さんの鼻を調べると、副鼻腔炎をもっているケースは結構あります。

ちょっとした動作で息切れしたり、咳や痰がしつこく続いたりなどが主な症状ですが、日本人男性の死因の8位(2017年・厚生労働省データ)に入るなど、進行すると死につながることもあります。

「タバコ病」とも呼ばれ、タバコの煙に含まれる有害物質等が気管支などの気道にある線毛を壊してしまうことが、発症の大きな要因です。

線毛は呼吸によって入ってきた外敵を追い払う、いわば気道の「お掃除係」の役割を担っています。そのため、タバコの煙によって線毛が徐々に壊されていくと、その浄化作用も低下します。その結果、気管支や肺において炎症が起こりやすくなってしまい、その状態が長期に渡って続くことで、動くと息切れがするなどCOPDの症状が出てくるようになるのです。

COPDを発症する人の9割以上が喫煙者とされ、喫煙者では約2割の人がCOPDを発症するといわれています。

治療においては、まず禁煙が必要です。タバコを止めることで、3カ月もすれば線毛はもとの機能を回復するといわれ、治療の効果も出やすくなります。実際に、禁煙をすると、たった数カ月で痰がらみが消えてなくなることがあります。

一方で、一般的に、鼻の自覚症状がまったくない「隠れ副鼻腔炎」の人が2割程度いるというデータもあります(これは喫煙者でCOPDを発症する割合と一致します)。

実際に、COPDの患者さんにCT検査をすると、副鼻腔炎を合併している方が少なくありません。COPDの主な発症原因は喫煙ですが、喫煙者の発症率が2割ということは、残りの8割はCOPDを発症していないことになります。

つまり、喫煙習慣があり、かつ副鼻腔炎をもっている人が、COPDになるのではないかと私は考えています。

実は鼻の炎症が原因かも!?「つらいせきが続いたら」記事リストはこちら!

030-shoei.jpg4章にわたり、長引く咳の原因と対策を網羅。咳対策用の枕、マスク、お茶の選び方などセルフケアの実践方法も紹介されています

 

杉原徳彦(すぎはら・なるひこ)

1967年8月13日生まれ。医療法人社団仁友会 仁友クリニック院長。医学博士。専門は呼吸器内科。日本内科学会認定医、日本アレルギー学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。東京都立府中病院(現・東京都立多摩総合医療センター)呼吸器科勤務を経て現職。上気道と下気道の炎症に着目した独自の視点で喘息診療を行う。

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『つらいせきが続いたら鼻の炎症を治しなさい』

(杉原徳彦/あさ出版)

「長引く咳」「痰がからみやすい」、放置しがちな体のちょっとした異変は、「鼻の炎症」が原因かもしれません。そのままにしておくと、全身に危険が迫る可能性も!?日本全国から毎月2000人以上の患者を受け入れて治療にあたる、呼吸器の名医がまとめた初著書の中には、思い当ることが多すぎて、きっと鼻の治療をすぐに始めたくなります。

※この記事は『つらいせきが続いたら鼻の炎症を治しなさい』(杉原徳彦/あさ出版)からの抜粋です。

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