50~60代はトラブルに注意!「インプラント治療」基礎知識

2019年3月、国民生活センターは、人工の歯を埋め込む「インプラント治療」に関し、手術後に痛みやしびれ、出血などの症状が現れたとの相談が、2013年4月~2018年12月に409件寄せられたとして注意を呼びかけました。相談者の半数以上は50~60代でした。そこで、日本大学歯学部付属歯科病院歯科インプラント科科長の萩原芳幸先生に「インプラント治療」についてお話を伺いました。

pixta_27944238_S.jpg

持病や薬の服用も確認を。高齢者のインプラント治療

歯を失い、食べ物をかみ砕けなくなると十分な栄養が摂れなくなり体が衰えます。すると、認知症などの病気が進行したり、社会活動に参加する意欲がなくなるなど、生活の質が低下してしまいます。ですから、何らかの原因で歯を失ったとしても、食べる機能を維持することは大変重要です。インプラント治療は、その方法の一つです。

かむ機能を維持するのに有効なインプラントですが、「高齢者の治療には特に注意が必要」と話すのは、萩原芳幸先生。「インプラントの手術を行う際は、全身の健康状態を把握する必要があります。治療中の病気はないか、薬の服用の有無などを細かく確認し、手術のリスクが高くないかを評価します。また、インプラント治療後は口の中を清潔に保つことと、歯科医院での定期的なメンテナンスが欠かせません。ですが、高齢になると体力が落ちて通院や意思疎通が難しくなることも。そういったことも踏まえて予防措置をとっておくことが大切です」。

具体的には、インプラントや人工歯の破損や脱落に備えて入れ歯を作っておく、インプラントで支える義歯や人工歯を家族や介護者が手入れしやすい形にするなどがあります。「人工歯の固定方法は複数ありますが、破損したときの修理のしやすさや、清掃のしやすさを考えると、取り外しが簡単なネジを用いる方法が対応しやすいでしょう」(萩原先生)。

インプラント治療を検討する際は、歯科医が自分のかかりつけの医師と連携して持病や服薬状況を確認しようとしているかどうか、検査の際はCT撮影を行うかといったことを参考に歯科医院を選ぶといいでしょう。

●インプラント治療とは?

失ってしまった歯の代わりに、あごの骨にチタン製のネジを埋め込み、かぶせ物をして人工の歯を作る治療です。力強くかめ、あごの骨にもきちんと刺激が伝わり、自然の歯と同様に食感、おいしさを感じることができます。
1908p098_1.jpg

●インプラント治療を受けるときは・・・

【病歴は必ず報告】
高血圧症や心臓疾患、脳血管疾患、糖尿病、骨粗鬆症などの治療を受けている人や治療歴がある人は、注意が必要です。治療を検討する際は、必ず歯科医師に正確に伝えましょう。

【薬の服用状況】
服薬状況も正確に伝えます。特に、骨粗鬆症の治療薬を飲んでいる場合や注射剤を使用している場合は注意が必要。お薬手帳を持参する、注射剤の名称をメモしておくなどしましょう。

【治療は全て自費】
インプラントは基本的に健康保険適用外の治療です。そのため、治療後のメンテナンスも保険適用外となります。医療費控除については、治療を受ける歯科医院に相談しましょう。

●治療後は、メンテナンスが重要です!

【毎日のセルフケア】
インプラントは骨としっかり接合しますが、天然歯と比べると粘膜との結合が弱く感染しやすい欠点があります。そのため、毎日の歯磨きなどで口腔内を清潔に保つことが重要です。

【歯科での定期検診】
治療後の良好な状態を長く維持するためには、3~4カ月ごとに歯科医院でのメンテナンスが必要です。治療後の不具合を防ぐためにも、専門医のメンテナンスは必ず受けましょう。

【将来への備えを】
通院や意思疎通が困難になる場合への対策も必要。人工歯のインプラントへの固定には外しやすいネジを用いる、破損や脱落に備えて入れ歯や仮の歯を作っておくなどしておきましょう。

その他の「健康キーワード」記事リストはこちら!

取材・文/笑(寳田真由美)

 

<教えてくれた人>

萩原芳幸(はぎわら・よしゆき)先生

日本大学准教授。日本大学歯学部付属歯科病院歯科インプラント科科長。日本補綴歯科学会専門医・指導医、日本口腔インプラント学会専門医・指導医。

この記事は『毎日が発見』2019年8月号に掲載の情報です。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP