朝目覚めて起き上がろうとした時にグルグル目が回るなどの「めまい」。「平成28年国民生活基礎調査」によれば、女性の約3割の人がめまいの症状を訴えているといいます。一言で「めまい」と言っても症状も原因もさまざま。そこで今回は、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科教授の肥塚泉先生に、タイプ別で、「めまいが起こる仕組み」や平衡訓練による改善方法について伺いました。
良性発作性頭位めまい症は、剥がれ落ちた耳石が関係しますが、メニエール病は、三半規管や、聴覚をつかさどる蝸牛にリンパ液がたまり水ぶくれのような状態になるため、めまいに加えて耳鳴りなどの聴覚障害が伴います。良性発作性頭位めまい症の仕組みを見てみましょう。
■「良性発作性頭位めまい症」が起こる仕組み
<正面を向いているとき>
剝がれ落ちた耳石が三半規管に入らない場合や、入っても移動しない場合には、めまいは起こらない。
<頭を動かしたとき>
剝がれ落ちた耳石が三半規管内を移動すると、リンパ液の流れが生じてめまいが起きる。症状は30秒くらいで治まるが、繰り返すのが特徴です。
一方でメニエール病はどのような仕組みで起こるのでしょうか?「メニエール病はストレスとの関係が深いといえます。ストレスを感じたときに、腎臓で尿を再吸収する抗利尿ホルモン(ADH)が分泌されますが、ADHを受け取る受容体が耳にもあるため、三半規管や蝸牛にリンパ液がたまるようになるのです」と肥塚先生は解説します。
几帳面でストレスがたまりやすい人は、メニエール病になりやすいので注意しましょう。
■「メニエール病」が起こる仕組み
右は正常、左はリンパ液がたまって、内耳全体が水ぶくれのようになっている状態です。三半 規管や耳石器が圧迫されると、聞こえにくくなったり耳鳴りがします。症状は20~30分から半日ほど続き、それを繰り返すのが特徴です。
突発性難聴は、めまいが1回だけ起こり片方の耳が突然聞こえなくなるのが症状の特徴です。また、耳の奥の前庭神経の炎症が原因の前庭神経炎は、グルグルと激しく回るめまいが、数日間断続的に続きます。突発性難聴は、早期の治療が欠かせないので医療機関で受診を。原因がわかったら、良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎は平衡訓練で症状の改善と予防が可能です。
「良性発作性頭位めまい症は、三半規管に入った耳石を平衡訓練で排出すれば治まります。メニエール病も発作が治まった後に、ふらつきが残ることがありますが、平衡訓練で症状は軽減されます。前庭神経炎は、風邪のウイルス感染が原因と考えられますが、薬で症状が治まった後にもふらつきが残ることがあり、その症状も平衡訓練で改善できます」と肥塚先生。
「寝転がり体操」は平衡訓練の基本です。習慣化すれば、めまいの改善・予防になります。また、親の介護などのストレスや運動不足も、耳の異常につながりやすいので、ストレス発散や運動習慣を持つなど生活習慣もめまい予防に大切です。
「持病の薬でもめまいにつながることがあります。特に5種類以上の多剤併用の方はご注意を。めまいの症状があるときは主治医に相談しましょう」
■達人のツボ
持病の薬には要注意です!
降圧剤や睡眠薬など持病の薬で「薬剤性めまい」が起こることがあります。 高齢になると肝機能や腎機能が低下して服用した薬の成分の代謝が悪くなるため、体内が多量の薬を飲んだ状態になりやすいのです。薬の副作用には注意が必要です。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史