水疱をつぶすのはNG!「単純ヘルペス」の基礎知識

「ヘルペス」とは、ヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症の一種。
皮膚や粘膜が赤く腫れて水疱ができ、痛みや強いかゆみを感じます。一度ウイルスに感染すると、いったん症状が改善しても、体調の悪化や外部からの刺激などで再発を繰り返しやすくなります。今回は単純ヘルペスの特徴と症状を、横浜市立大学附属市民総合医療センター皮膚科准教授の蒲原毅先生にお聞きしました。

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単純ヘルペスは「風邪の華」、「熱の華」とも呼ばれ、風邪やストレス、疲労などによって免疫力が低下すると発症します。

初感染時に症状が現れる場合と、初感染時には症状が現れず、再発して初めて症状が出る場合があります。

特に性器への初感染時に症状が現れた場合は、リンパ節の腫れや発熱、倦怠感などの症状をともなうことが多く、排尿や歩行が困難になることもあります。

それでは、発症部位別に症状を見ていきましょう。

 
●口唇ヘルペス

唇に発生することが多いので口唇ヘルペスともいいますが、必ず唇にできるわけではなく、頬や目の周り、腕、指先などに疱疹ができることもあります。食器の共有や、口移し、キスなど、患部や体液に粘膜が触れることで感染します。

「初感染時は無症状のことが多いのですが、免疫力の低い子供などは歯肉炎や口内炎を発症する可能性もあります。また、アトピー性皮膚炎の患者は重症化しやすく、まれに顔全体に水痘が発生し、症状が長引く『カポジ水痘様発疹症(すいとうようほっしんしょう)』に移行するケースも見られます」(蒲原先生)

特徴的なのは、水疱です。

赤みを帯びた小さな水疱が集合的に発生し、ちくちくした痛みやかゆみ、不快感をともないます。発生する場所によっては症状が分かりにくく、見た目では判断しづらい場合もあるため、診断する際は必要に応じて血液検査を行います。

水疱が膨らんでくると目立つため、肉体的な苦痛以上に、精神的な苦痛を感じる患者もいます。

水疱内の液体にはウイルスに感染した細胞が含まれているため、他の人への感染を避けるためにも、水疱をつぶすことは避けましょう。

5日ほどで水疱がかさぶたになりはじめ、自然に剥がれて治癒します。長引く場合は、免疫力の低下によってヘルペスが重症化している可能性が高いため、医療機関を受診してください。


●性器ヘルペス

性器周辺に発生することが多いため性器ヘルペスと呼ばれますが、女性は膀胱や子宮頚部にまで症状が及ぶこともあります。

水疱だけでなく皮膚の赤みやただれ、浅い潰瘍などが生じ、痛みとかゆみをともなって強い不快感があります。症状のピークは1週間ほどで、その後自然治癒します。患部や体液が粘膜に触れることで感染するため、感染理由の多くは性行為です。

初感染時は皮膚症状だけでなく、前述した発熱などの全身症状が現れて重症化し、治癒までに2~3週間かかるケースもあります。

再発では発熱などが起きることは少なく、より軽い症状で済む場合がほとんどです。ただし再発の頻度は高く、症状が出ている患者の60%以上は再発によるものだといわれています。

口唇ヘルペスにしろ、性器ヘルペスにしろ、再発の場合は「前駆症状」が現れることがあります。異常が現れる前に、前触れとして皮膚が痛がゆくなったり、ぴりぴりとした違和感が出たりするのです。このタイミングで対処できれば本格的な発症を防ぐこともできるので、体のサインを見逃さないよう、日頃から気をつけてみてください。

 

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取材・文/高橋星羽(デコ)

 

<教えてくれた人>

蒲原 毅(かんばら・たけし)先生

1995年横浜市立大学医学部卒業。同附属市民総合医療センター皮膚科部長、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医。帯状疱疹や皮膚病全般の診断と治療が専門。

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