あなたの身体のお悩みに医療法人社団同友会理事長 高谷典秀先生が答える「なんでも健康相談」。今回は定年後のご主人の体調を気遣う奥様の悩みに答えます。
Q
定年退職後に家にこもりきりで元気がない主人...
66歳の女性です。私の主人について質問をさせてください。
主人は昨年定年退職をしたため、今は一日中家にいるのですが、最近まったく元気がありません。
以前よりも食欲が無く、会話も少なくなり、一日中テレビを見ていたり、布団をかぶって休んでいたり、話しかけても生返事しかしません。はじめはうつ病なのかとも思いましたが、最近では胃が痛いとか、頭痛がするなどと言います。健康診断では異常はなかったようなのですが、心配です。
主人はうつ病なのか、それとも何か他の病気でしょうか。(東京都・HK)
A
早めに専門医の診察を。生活の変化も一因に
今回は、最近ご主人の元気が無く、うつ病ではないかというご質問です。
近年うつ病の増加が、家庭のみならず職場でも大きな問題になっています。特に年間3万人を越える自殺者が10年以上にわたって続いていることは、社会的にも大きな損失となっています。
うつ病は患者さんごとに、そのタイプや背景が様々ですが、典型的には几帳面で生真面目であり、秩序を重んじ、他人に配慮し自責的となる性格の方がうつ病になりやすいといわれています。また、ご主人のような定年退職や、伴侶との死別など、日常の生活に大きな変化があった時をきっかけとして発症することも多く見られます。
うつ病によく見られる症状として、気分が沈み、食欲がなくなったり、会話が少なくなったりすることがあげられます。その他にも、注意力、集中力の低下、睡眠障害などの症状も見られます。
一方でご主人の場合は、胃の痛みや頭痛など、身体症状も出ているという事が気になります。胃が痛いという事であれば、やはり胃潰瘍や十二指腸潰瘍などが無いかどうか、きちんと検査しなければなりません。健康診断では異常が無かったようですが、たとえば特定健診など、胃の検査を行わない種類の健診もありますので、その確認も必要でしょう。また、頭痛の場合、脳の病気が無いか、あるいは血圧が異常に高くなっていないか、そういった事の確認も当然必要です。
ただ、うつ病であっても、こういった身体症状が伴う場合も多く、胃の痛み、頭痛以外にも、胸痛や全身倦怠感など多彩な症状が出現します。また、先にも出ました睡眠障害というものは、うつ病の方の多くに認められる症状ですので、寝付けないとか、早朝に目が覚めてしまうとか、もしそのような症状出てきた場合は注意が必要です。
うつ病の治療の基本は、生活環境の整備とともに、抗うつ剤や睡眠薬などを用いた投薬治療となります。処方された薬はきちんと飲むことが大切で、調子が良くなったからといって、自分の判断で止めたりしてしまうと、急に悪化してしまうこともありますので注意が必要です。
脅かすわけではありませんが、うつ病をそのまま放置してしまった場合に、一番恐いのは自殺です。そのような事態を防ぐために、うつ病においても早期発見、早期治療が重要です。必ず専門医による診断、そして適切な治療を早めに行うようにしてください。(老友新聞社)
高谷 典秀 先生(たかや・のりひで)
医療法人社団同友会 理事長。順天堂大学循環器内科非常勤講師。日本人間ドック健診協会 理事。学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授。
著書に『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』(株式会社法研)など。