いつの間にか足にできている魚の目やタコ。症状がひどくなければ、「ヒールを履いているから仕方ない」「そのうちに治るだろう」と、そのまま放置していませんか?
実は、魚の目やタコは健康な足にはできません。「あって当たり前」ではなく、「なくて当たり前」の症状です。小さな症状ではありますが、足のバランスが悪くなっていることを知らせる初期のサインなので、きちんと受け止めて治療することが必要です。
魚の目やタコ、また、それらと間違えやすいイボについて、それぞれの特徴や原因、治療法などを、足専門クリニック「足のクリニック 表参道」院長・桑原靖先生にお聞きしました。
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市販のものから試し、必要であれば医療用も検討
魚の目やタコができないようにするには、足の骨のアーチ構造を保つことが最も重要ですが、桑原先生が積極的に予防や治療に取り入れているのが、インソールを使ってこのアーチを補正する方法です。
インソールとは靴の中に敷く中敷きのこと。一般的には靴のサイズの調整や防寒などのために使うイメージがありますが、本来は崩れてしまった足のアーチが理想的な形になるように補うためのものです。
「適切なインソールを使うことによって足のアーチが矯正できれば、トラブルの原因が根本的に解消できるだけでなく、背筋が伸びて姿勢がよくなり、ひざや腰の痛みの軽減にもつながります」(桑原先生)
この場合の矯正用インソールは、一般的に硬くて曲がらない素材で作られたものです。シリコンやジェルなどの柔らかい素材は、クッション性はありますが、崩れてしまった足のアーチを支えることが難しいからです。形状は足のアーチを下から支える立体的な形で、土踏まずの真下でなく、その少し後ろにふくらみがあるものが理想的です。
入手するには、市販品を購入する方法と、医療機関でオーダーメイドする方法の2とおりがあります。それぞれに特徴や選び方があるので、自分に合ったものを探しましょう。インソールは自分の足の形に合っていないと痛くて履きづらく、アーチも正しく矯正できません。ですから、オーダーメイドで完全にその人の足に合うように作ることが理想ですが、症状が軽く、市販品でも足のアーチをきちんと保てるなら問題ないでしょう。
■市販品
症状が軽く、「ある程度、楽になればよい」という場合は、市販品でも役に立つものが多くあります。靴メーカーの直営店やシューフィッターのいる靴専門店などで扱っています。さまざまな硬さがあり、症状にもよるので一概にはいえませんが、一般的には少し硬いと感じる程度のものを選ぶとよいでしょう。
購入する際、最も重要なのは、足のどこがどのように痛いのか、という点。足裏の親指にできた魚の目が痛い、小指の付け根にできた魚の目が痛いといった足の症状や悩みを、専門のアドバイザーがいる靴店で相談しながら、適切なものを選んでもらうのがおすすめです。きちんとした商品なら、最低でも5,000円~10,000円程度はします。安価で販売しているようなものはあまり効果が期待できません。
市販品の場合、足に合っているかどうか、自分で判断するのはなかなか難しいもの。痛みなどの症状が強い場合は、専門医の処方を受けてオーダーメイドで作るほうが、やはり安心です。
■オーダーメイド
フットケア外来や足専門の医療機関で、専門医が患者の症状に合わせて処方し、治療用のインソールを作製します。足に健康上の問題があり、通常の足の機能を保てない場合、保険が適用されることもあります。
作り方は、まず医師が素材や形を処方し、日本では義肢装具士が足型をとり、石膏を流し込んで型をとった後、理想的なアーチの立体曲面となるように補正を加えながら作製します。最も重要なのは、足の型をとる工程。足は立体的な部位なので、適切な3次元で型をとらないと効果的なインソールを作ることはできません。ただ足の寸法を簡単に測っただけでは、患者に合わせたインソールを作成することは難しいでしょう。
インソールは靴型に合っていないと靴に収まらないので、スニーカー用、パンプス用など、靴の種類ごとに作り分ける必要があります。靴の形状から、スニーカー用のインソールを使うことが、最も効果が高いといわれています。
「市販品、オーダーメイドともに、履いてすぐに痛みを感じる場合を除けば、そのインソールが本当に自分に合っているかは、すぐには分かりません。1~2カ月ほど経過を見て、悩んでいた足の痛みがなくなっていたり、足や全身が動きやすくなっていたり、疲れにくくなっていたら、そのインソールは合っているといえるでしょう」(桑原先生)
ちなみにインソールは、たとえてみれば、メガネのようなもの。不具合を補正・調整し、使っているときは快適にしてくれますが、使うのをやめるとすぐに元に戻ります。また、入れ歯と同じく、他人に合わせて作製したものを自分が使うことはできません。
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取材・文/岡田知子(BLOOM)