子どものころに治療を受けるのはADHDの人の5%以下。子どもと大人のADHDの違いとは?/大人の発達障害

「相手の気持ちが分からない」「その場の雰囲気を察することができない」「整理整頓ができず部屋中に物が散乱している」...。仕事や家庭生活でこんな悩みを持ち、「もしかしたら自分は『大人の発達障害』かもしれない」と考える人が増えているようです。以前は「発達障害」といえば子どもの疾患だと考えられていましたが、近年、大人になってからも症状が続くことが認識されるようになりました。テレビや雑誌などでも「大人の発達障害」として、「ADHD(注意欠如多動性障害)」や、ASD(自閉症スペクトラム障害)の一種である「アスペルガー症候群」などが頻繁に取り上げられるようになっています。

発達障害とはどんな疾患で、どんな特性があるのかなどについて、発達障害の診断・治療の第一人者である昭和大学医学部精神医学講座主任教授の岩波明先生に聞きました。

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●ADHDはそれほど症状が重くない子どもが9割以上

ADHDの症状は大人になってから急に現れるのではなく、幼少期のころから言動や行動に特徴的な症状が現れています。「子どものころに児童精神科で診察を受けるのは、症状が比較的重い子どもたちです。ADHDの子ども全体から見ると5パーセント以下です。残りの9割以上の子どもたちは、ADHDと認識されないまま大人になります。特に、多動の症状があまり見られず不注意の症状が優勢で、なおかつ知的能力も高い場合は『障害』『疾患』だと認識されずに成長することがほとんどです」と岩波先生。

 
●子どものADHDでは落ち着きのなさや忘れ物、うっかりミスが目立つ

○幼少期
いままでお絵かきをしていたかと思うと、近くにある積み木などの別のおもちゃで遊び始めるなど、一つの遊びを継続することが少ないです。外の景色や周囲の音が気になって、先生の話を集中して聞くことができません。自分が興味を持ったことであれば、過剰に集中することもありますが、ほとんどの場合はすぐに他に興味が移ってしまいます。

○学童期以降
忘れ物が多く、カバン、帽子、体操着、楽器などあらゆるものを忘れます。成績が良い場合も多いのですが、テストではケアレスミスが多く、身の回りの整理整頓ができません。キョロキョロする、いつも体をゆすっている、おしゃべりが止まらないなど、多動の様子が見られることもありますが、授業中に勝手に立ち歩くほどでなければ問題にならず、そのまま成長します。

 
●大人になると症状は変化しながらも継続する

ADHDの人は成長するにしたがい自らを抑制する意識が働くようです。そのため大人になると「多動」について、外見上は目立たなくなります。その一方で、「注意欠如」の側面が目立ってきます。財布やスマートフォンなどの置き忘れや紛失が頻繁に起こり、片付けができず、仕事中や会議中に注意力が維持できません。思ったことをすぐ口に出し、相手の話にかぶせて話したりします。そのため仕事に支障を来して不適応になるケースもあるのです。

「大人になると子どものころと比べて『衝動性』がますます強くなり、時に『依存』という形で現れることがあります。例えば、ADHDの人はアルコール依存症やギャンブル依存症になりやすいのです。車のスピードの出しすぎや薬物依存症などの問題行動が見られることもあります。女性のADHDの人は買い物依存症や過食症になるケースがよくあります」と岩波先生。
 

<ADHDの子どもから大人への行動の変化>
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取材・文/松澤ゆかり

 

岩波明(いわなみ・あきら)先生

昭和大学医学部精神医学講座主任教授、同大学附属烏山病院病院長。医学博士。東京大学医学部卒業後、都立松沢病院、東京大学医学部精神医学教室助教授、埼玉医科大学精神医学教室准教授などを経て現職。著書に『発達障害』(文春新書)、『大人のADHD』(ちくま新書)などがある。

昭和大学附属烏山病院ホームページ

 

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