成人の約5分の1が「不眠」と言われる現代。市場には「快眠」のための情報やグッズが溢れています。しかし実は睡眠に関しては多くの誤解や不正確な情報が氾濫しているのが現実です。精神神経学・睡眠学・時間生物学の第一人者が、中高年男女のための「快眠法」を伝授。本当にぐっすり眠りたい現代人のための「睡眠ガイド」です。
※この記事は書籍『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』(内山 真/KADOKAWA)からの抜粋です。
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【実例:男性50代の睡眠のケース】
思ったように眠れない
最近、疲れがたまりやすいような気がする。仕事で遅くなると、次の日は早くから疲れが出てしまう。体力が少し落ちてきたのか、もっと眠らなくてはいけないのだろうか。
朝早い時刻に目が覚めてしまう。毎日起きるべき時刻の前に目覚めている。遅くまで起きていた次の朝でも、いつもの時刻には目が覚める。疲れているのに、睡眠不足になっていないか心配だ。休日には睡眠不足を補うよう眠っていようとしても、いつも起きる6時になると目が覚めてしまい、眠れない。
早くから眠くなってしまい、ニュースを見る前に眠ってしまう。ひどいときはテレビを見ながら眠ってしまい、夏は朝4時頃に目覚めてしまうことがある。
午後の早い時刻に、ぼーっとしてうつらうつらしやすい。横になったらいつでも眠れるようになった。朝起きたときに口がひどく渇いていたり、頭痛がしたりすることがある。家族からは、いびきをかいて眠っていたと言われる。
●原因と背景
多くの男性は50代になると朝型化してきます。夜は早く眠たくなって、朝は早くに目覚めるようになってきます。このため朝眠たくて起きられないということは少なくなってきます。
いつもより早く起きて出勤前に本を読んだり、書類を書いたりということも苦でなくなります。一方で、夜更かしに弱くなってきます。夜の眠気に勝てずに眠ってしまうことが増えてきます。これは、体力が少し落ちてきたとか、気力が落ちてきたために起こるのではありません。これは体内時計の調節機能が年をとって朝型に変わってくるために起こってくるものです。
体内時計の朝型化は光の影響を受けますから、とくに夏になって日の出が早くなるとその影響で、早寝早起きの傾向は強くなってきます。眠りを妨げる睡眠時無呼吸症候群になる人もさらに増えてきます。睡眠時間をきちんととっていても、呼吸の通りが悪いため、睡眠が安定せず、また、睡眠中の脳への酸素供給も不良になるため、脳の回復が妨げられて、日中のぼんやり感や眠気が出てくるのです。睡眠中、ひどいいびきと呼吸の停止が見られます。寝酒が常習化する人も増えてきます。
●対策のポイント
自分の睡眠が朝型化していることを自分で知ることが大切です。朝型化について理解して、それをベースに生活を考えることが大切です。朝型化は夜は早くから眠くなり、朝早くに目が覚めてしまうのが特徴です。
夜なるべく起きているように工夫することや、夜に明るいところで過ごすことが役に立ちます。野球が好きな人ならナイターを観戦するのもよいでしょう。ただ毎晩ナイターを観に行くのは現実的ではありません。そして、起床したあとの一定時間、7~8時までブルーライトカットのサングラスをかけて過ごすのもひとつの方法です。朝の体内時計リセットがはっきり起こりすぎないようにすることで朝型から脱出するのです。
早く起きるからといって、意識して夜の就床時刻を早める必要はありません。これまでどおりの時刻をキープするか、眠くなったら寝床に入る習慣にします。
時間が短いことにこだわる必要はないのです。
深刻な睡眠不足に耐えて、仕事をしたりできるのは、せいぜい40代までです。就床する時間を不足気味で過ごすことができるのは40代までということです。睡眠不足の場合、日中、特に午後の早い時間に眠気や居眠りに襲われます。
むしろ50代になると、就床してもよく眠れないために睡眠がとれていないと感じる人が増えてきます。この場合には、単純な睡眠不足のような日中の眠気に襲われるよりも、日中の全般的な不調感が出てきやすいのが特徴です。
就床してもよく眠れない不眠に対しては、横になっている時間を増やそうとすると、却って睡眠の困難が増すため注意が必要です。寝つきが悪い場合には、休日を含めて一定時刻に起床し、夜は眠くなってから就床すること、中途覚醒には、遅寝早起きで就床時間を6.5時間程度に適正化することを心がけましょう。ひどいいびき、起床時の頭痛や口渇があり、日中の眠気がひどくなったときには睡眠時無呼吸症候群が考えられますから、受診をお勧めします。
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