50代の女性は早く寝ようとしても寝られない。男女の睡眠リズムの違いを理解しよう/眠りの新常識

成人の約5分の1が「不眠」と言われる現代。市場には「快眠」のための情報やグッズが溢れています。しかし実は睡眠に関しては多くの誤解や不正確な情報が氾濫しているのが現実です。精神神経学・睡眠学・時間生物学の第一人者が、中高年男女のための「快眠法」を伝授。本当にぐっすり眠りたい現代人のための「睡眠ガイド」です。

※この記事は書籍『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』(KADOKAWA)からの抜粋です。

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前の記事「朝型化し、夜更かしがツラくなる男性の50代。眠くなったら寝床に入るのが〇/眠りの新常識(3)」はこちら。

 

【実例:女性50代の睡眠のケース

子どもが就職して、早朝のお弁当づくりもなくなって早起きする必要がなくなった。夜も子どもたちは自分で気ままに過ごすようになったので、つきあって遅くまで起きていることもしなくていい。

自由に、思いどおりに眠れるようになった。時間の余裕ができたので、これまでの睡眠不足を取り戻そうと、それまでよりずっと早く床につくようにして、朝は遅くまで寝ていることにした。ところが思ったように眠れない。夜は寝つきの悪さを感じるし、朝はもっと寝ていたいのに早く目が覚めてしまう。睡眠不足感は少しも改善しない。

学生時代の友だちと映画や演劇鑑賞に行くようになったが、長くじっとしているのがつらく、足を動かさずにいられなくなり苦しい。夜も就床すると同じような感じで、じっとしていられず寝つけないことがあるが、それと似ている。

 

●原因・背景
50代になると、不眠を訴えて外来を訪れる女性が増えてきます。時間もあるし、ストレスも特にないのに眠れない。もっと眠れる方法はないか、どこか悪いのではないか、というわけです。

いろいろお話を聞いて、いつごろから眠れなくなったか記憶をたどってもらうと、よく出てくる典型的な例は、夫が早寝早起きをするようになってからというものです。それがちょうどお子さんに手がかからなくなった時期とも一致しています。

どうも生活のリズム、とくに夫の睡眠の変化や家庭内での役割の変化から、睡眠スケジュールが変わったことがきっかけになっていることが多いようです。夫に生活を合わせるようになって、早く就床するようになったことがきっかけになるのです。眠たくないのに眠ろうと就床するため起こる入眠困難です。

一般に加齢により、体内時計の機能が朝型化しやすくなりますが、これには男女差があって、男性では40代後半から50代にかけて始まってきますが、女性では10年以上遅くなります。つまり加齢変化が起こるのが遅いと捉えてよいかもしれません。

女性は40代後半から50代にかけて更年期にさしかかります。それが眠りにも関係します。閉経によってホルモン環境が変わり、男性と似てくるので、男性に多く見られる睡眠時無呼吸症候群になる女性も増えてきます。この病気では夜中に何度も目が覚めるなど眠りが浅くなるので、そのことが不眠の原因になっていることもあります。

時間に余裕ができて、女性の友人どうしでコンサートや観劇などを楽しむことができるようになります。身体を動かさずじっとしているときに問題になるのが、レストレスレッグス症候群です。それまでなんとなく寝つきが悪くなったと思っていた人の中で、実は異常感覚で眠れないレストレスレッグス症候群が背景にあったことに気づく場合もあります。生活の工夫に加えて、薬物治療が必要な場合もあります。

●対策のポイント
夫が早くから眠ってしまうと、早寝のほうが健康によいのではないかと思って、早くから就床する女性がいます。夫が早くから眠ってしまうのがうらやましい。これは、夜更かしだったお子さんが独立したりすると、夜の時間を楽しめなくなってこうした気持ちが強くなります。

夫に合わせて就床すると、体内時計による休息態勢の準備ができていないので、なかなか眠れません。夫の寝入りばなのいびきも気になります。このせいで寝つけないと感じる人も多いようです。

睡眠時間を確保しようとして早めに就床すると、眠りに入るまでに時間がかかったり、そのせいで考えごとをしてよけいに眠れなくなったり、さらに眠れないこと自体が心配の種になったりして、ますます眠れなくなります。対策としては、まず元々の自分の睡眠スケジュールをよく思い出して、それに合わせて生活するように心がけましょう。この場合には、夜の時間を楽しめるような生活の工夫が必要です。

レストレスレッグス症候群は、夜の時間帯になって安静にしていると出現する下肢の異常感覚が苦痛となって、よく眠ることができない睡眠障害です。通常は、就床していざ眠ろうとするときに出てくることが多いのですが、夜のコンサートや観劇などでじっとしているときにも出てきやすいのです。

 

男女の睡眠に関する相互作用

50代から60代にかけての睡眠の問題の背景には、シニアになって明らかになってくる男女の睡眠障害の違い、睡眠そのものの違い、家庭内での役割の違いなどが影響しています。

夫は早くから寝入ってしまい、妻が就床する頃にはいびきをかいている。その音がうるさくて寝つけない。朝は朝で、夫は早く起きて動きまわる、その物音や気配で目が覚めてしまう。なかには、眠っている妻に声をかけて起こしたりする夫もいます。

夫婦で解決する方策は三つあります。第1は夫の朝型化を適正化すること、夫のいびきを治療すること。第2には妻の睡眠習慣を自分に合った睡眠スケジュールに戻すこと。第3には大変ですが光の調節で二人の生活時間帯を合わせることも可能です。実際にそうしている人が多いのですが、夜間は寝室を別にして互いの干渉をなくす方法もあります。

 

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内山 真(うちやま まこと)

1980年、東北大学医学部卒業、東京医科歯科大学精神神経科研修医。91年、現・国立精神・神経医療研究センター室長、 92~93年、ドイツ・ヘファタ神経学病院の睡眠障害研究施設に留学、同センタ一部長を経て、2006年より日本大学医学部精神医学系主任教授。著書に、「睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識」(KADOKAWA)、「名医が教える不眠症に打ち克つ本」(アーク出版)、「睡眠のはなし」(中公新書)、「睡眠障害の対応と治療ガイドライン第2版」(じほう)、『別冊NHK きょうの健康 睡眠の病気」」(NHK出版)など多数。NHK 「きょうの健康」 をはじめ、メディアヘの出演も多い。日本睡眠学会理事長、日本臨床神経生理学会理事、日本時間生物学会理事、日本女性心身医学会監事、日本精神神経学会代議員など。


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『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』

1日8時間の睡眠を取った場合、私たちは人生の3分の1を睡眠時間に費やしていることになります。しかしこれほど多くの時間を睡眠に使っているにも関わらず、実は睡眠については未だ多くの誤解や不正確な情報が氾濫している状況です。本書は精神神経学・睡眠学・時間生物学の第一人者である著者が、中高年男女の様々な悩みに答えながら「快眠法」を具体的にアドバイス!忙しく睡眠リズムを崩しやすい現代人を良質な睡眠へ導くための「睡眠ガイドブック」です。

 

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この記事は『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』からの抜粋です
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