あなたの身体のお悩みに医療法人社団同友会理事長 高谷典秀先生が答える「なんでも健康相談」。今回はこんなお悩みに答えます。
Q
機械を扱う作業中にも睡魔に襲われる...
63歳の男性です。昼間、強烈な睡魔に襲われて仕事にならない事があります。
金属を加工する機械を扱う仕事なので、作業中に居眠りをしてしまうと危険です。なんとか眠気を我慢しているのですが、頭痛がしてくるほどで、昼休みに少し昼寝をしても、まだ眠いです。
お酒が大好きで、夜は晩酌をしているため、布団に入るとすぐに眠れます。11時には寝て、睡眠時間は7時間ほどもあるのですが、目覚めた時にはすっきりとしません。家内からは「いびきがうるさい」と言われるほど、ちゃんと眠っているはずなのですが、なぜ昼間、眠くなるのでしょうか。なにか対処法はありますでしょうか。
A
睡眠時無呼吸の可能性があります。
日中、強烈な眠気に襲われるという方からのご相談です。日中の眠気というものは、あなたのように機械を扱う作業をされる方だけでなく、たとえば車の運転をされる方などにとっても、非常に危険な事ですので、深刻な問題かと思います。
睡眠にまつわる病気や障害を「睡眠障害」と呼びます。夜になっても全く眠れなくなってしまう「不眠症」というものをよく耳にしますが、あなたの場合、すぐに寝付けるという事ですので、不眠症ではないようです。
お手紙を拝見して気になったのは、いびきがうるさいという事です。この症状から、眠っている間に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸」の可能性が高いのではないかと考えられます。
いびきというのは、気道が細くなっている部分へ、呼吸による空気が流れて音が鳴る現象なのですが、時々、気道がぴったりと閉じてしまい、完全に呼吸ができなくなってしまう状況が起こります。
夜、眠っている時には筋肉も柔らかくなるため、舌根が沈下して気道を塞いでしまうのです。呼吸が止まってしまうと、体が低酸素状態に陥って、眠っているつもりでも熟睡することができなくなります。これが睡眠時無呼吸と呼ばれるものです。
ご家族から、いびきがうるさいとか、寝ている時に息が止まっているというような指摘をうけて、なおかつ日中に眠くなってしまうというような方は、睡眠時無呼吸の有無を精査する必要があります。
睡眠時無呼吸の場合、日中眠くなるというだけではなく、血圧の上昇を引き起こしたり、心臓をはじめ様々な臓器に負担をかけてしまい、生活習慣病の悪化の一因であることも示唆されています。そのため、そういった問題を持っている方はとくに、きちんとした評価と治療が大切になってきますので、一度、睡眠時無呼吸外来を受診してみてください。
検査は簡単な機械を付けて、酸素濃度や呼吸の有無をチェックし、寝ている最中に、どのように低酸素状態が起きているか、呼吸が止まっているかというものを定量的に評価するものです。場合によっては脳波なども含めた精密検査をするため、入院をすることもあります。
もし睡眠時無呼吸であった場合、最近では持続陽圧呼吸療法(CPAP)という、睡眠時にマスクを付け、そこから空気を送り込むことで気道の閉塞を防ぐ治療方法があります。このCPAPが体に合う方であれば、睡眠中の呼吸がとても快適になり、日中の軽眠傾向もすっきりとなくなります。
それ以外にも、マウスピースを装着して気道が閉塞するのを防ぐ方法や、気道を閉塞させてしまうような鼻や口の中の構造をしている方もいるので、そういう方の場合、一部を切除して、気道を広げるような手術をすることもあります。
また、太っている人や、あごが小さい人などは睡眠時無呼吸になりやすいです。あごの小ささを改善することはできませんが、もし、太り気味のようでしたら、なるべく痩せることを心がけてください。また、軽度の無呼吸であれば、横向きで寝るなどにより改善することもあるので試してみてください。(老友新聞社)
高谷 典秀 先生(たかや・のりひで)
医療法人社団同友会 理事長。順天堂大学循環器内科非常勤講師。日本人間ドック健診協会 理事。学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授。
著書に『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』(株式会社法研)など。