ホルモン補充療法は、症状や生活スタイルに合わせて選択を(2)/更年期障害(12)

ホルモン補充療法は、症状や生活スタイルに合わせて選択を(2)/更年期障害(12) pixta_23319047_S.jpg40代半ばを過ぎて妙にイライラすると感じたら、更年期が始まっているかもしれません。更年期は、思春期と並ぶホルモンの大変動期で、疲労や肩こり、のぼせなど、これまで感じなかったさまざまな不調が起こりやすくなります。ひどくなると、更年期障害と呼ばれ、日常生活に支障をきたすこともあります。

この大変動期をできるだけ心地よく過ごすにはどうしたらよいのか、飯田橋レディースクリニック院長の岡野浩哉先生にお伺いしました。今回はその12回目です。

前の記事「ホルモン補充療法は、症状や生活スタイルに合わせて選択を(1)/更年期障害(11)」はこちら。

 
薬の投与により、月経のような出血が起こることも

「ホルモン補充療法(以下、HRT)の薬の投与方法には、月経のような出血を起こす方法と起こさない方法があります。閉経しているか、閉経している場合は閉経からどの程度の月日が経っているか、手術などで子宮を摘出していないかどうか、他の病気との関係など、1人1人の状態に合わせて使い方(投与方法)を検討します。どのように治療をしていきたいか、遠慮なく医師に相談してください」とは、飯田橋レディースクリニック院長の岡野浩哉先生。

下記に、HRTの具体的な使い方(投与方法)をご紹介します。自分の体に適した使い方を知って、更年期のつらい症状の改善に役立てましょう。

 

●HRTの使い方(投与方法)

・周期的併用投与法
エストロゲン製剤と一緒に、一定期間だけ黄体ホルモン製剤を使用する方法。定期的に月経のような出血が起こりますが、経血量は月経に比べてずっと少なめ。出血を起こすことで、子宮体がんを予防します。閉経確認前の不順な時期(周閉経期)や閉経直後の人に向いています。

・持続的投与法
エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤を毎日投与する方法。使い始めからしばらくは不規則な出血が見られますが、徐々に出血はなくなります。月経のような出血がいやな人や、閉経から数年経っている人に向いています。子宮のない人にはエストロゲン製剤のみを投与します。


HRTで使う薬は、漢方や精神科の薬、風邪薬、頭痛薬、抗アレルギー剤、コレステロール低下剤、降圧剤、便秘薬など、一般的な薬と併用することも可能です。日常的に服用している薬がある場合は、医師に併用の可否を確認しておきましょう。

「更年期の症状が、外陰部の萎縮や膣の萎縮に伴う局所の炎症や乾燥、痛み、性交痛などの場合は、エストロゲンを膣に直接投与する方法もあります。こちらは全身への影響が少なく、膣に対しては即効性が期待できる極めて安全性の高い治療法。更年期以降の尿のトラブルや過活動膀胱(※1)にも有効です。医師と相談のうえ、自分の症状や体質に合わせた治療法を見つけてください」
※1:過活動膀胱/尿意切迫感を主症状とし、多くは頻尿・夜間頻尿を伴い、時に切迫性尿失禁を伴います。「急に我慢できない強い尿意をもよおし、漏れそうになる」「トイレに行く回数が多い」「急に尿意をもよおし、トイレに間に合わずもらしてしまった」などの経験があったら、過活動膀胱の可能性があります。

 

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次の記事「安心してホルモン補充療法を続けるには?/更年期障害(13)」はこちら。

取材・文/笑(寶田真由美)

<教えてくれた人>
岡野 浩哉(おかの・ひろや)先生

飯田橋レディースクリニック院長。群馬大学医学部卒業後、同医学部附属病院産婦人科、 東京女子医科大学産婦人科などで臨床経験を経て、平成20年に飯田橋レディースクリニック設立。 「患者にやさしい医療」をモットーに、新聞・雑誌等メディアへ執筆多数。

 

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