超・長寿時代の日本を生き抜くために最も重要な資産は「健康」です。複雑な社会をサバイブできるメンタル管理、ワクチン接種で予防できるがんのことなど、堀江貴文氏が医師に聞いた「ホンネ情報」をお届けします。高パフォーマンスで人生100年を生きるためのホリエモン流「ライフスタイル革命論」です。
※この記事は『健康の結論』(堀江貴文/KADOKAWA)からの抜粋です。
前の記事「死にたいと言われたら、ワンオペではなく、チームで支える/堀江貴文「健康の結論」(3)」はこちら。
性交渉した男女の多くが、一生に一度はHPVに感染
みなさんは、ヒトパピローマウイルス(Human papilloma virus、以下は略してHPV)をご存じだろうか。女性の「子宮頸がん」の原因となるウイルスである。
男性の僕が今なぜHPVを語るのか、疑問を持つ人も多いだろう。性交渉によって感染するHPVは、日本では女性の問題としてクローズアップされがちだが、男女問わず感染するウイルスである。男性のがんや性感染症も引き起こすため、アメリカやカナダなどでは男性の予防も推奨されている。
ここでは、まだ誤解されることも多いHPV予防の話を中心に、男性こそぜひ知っておいてほしい産婦人科領域のトピックスをお伝えする。
HPVは、性交渉をおこなったことのある男女の約80%が生涯に一度は感染する、ごくありふれたウイルスである。
またある医師に聞いた話によると、耳鼻咽喉科でおこなった調査では、患者が治療中にうがいをしてペッと吐いた廃液を採取し、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)でDNA解析にかけたところ、かなりの頻度でHPVが見つかったという。つまり、相当数のHPVが咽頭(のどの奥)にいるということだ。このように多くの人に身近で、特別珍しくもないウイルスだが、意外にその存在や感染が引き起こす病気のことは知られていない。
皮膚や粘膜の「接触」によって感染するHPVは、性交渉では子宮頸部や陰茎に感染する可能性がある。さらにオーラルセックスをすれば咽頭に、アナルセックスをすれば肛門にも感染しうる。女性の場合は子宮頸がん、腟がん、外陰がん、男性は陰茎がん、男女問わず中咽頭がんや肛門がんの原因になるほか、性感染症である「尖圭コンジローマ」を引き起こす。
ただし、感染してもただちにこれらの病気になるわけではない。
HPVは現在、100種類以上の"型"が発見されているが、その約90 %は一過性感染にとどまり、病変を形成するには至らない。がんの原因になるのは高リスク群のHPVであり、長い時間特別な症状もなく潜伏し、持続感染によってやがてがんを引き起こす。
国内で年間1万人以上の女性が罹患する子宮頸がんに比べれば、頻度は低いものの、すべてのがんのうち、中咽頭がんは0.2%、肛門がんは0.15%、陰茎がんは男性のがんのうち0.5%と、男女を問わずHPVは予防するべき疾病の原因であることに変わりはない。アメリカやカナダなどでは女性のみならず男性へのHPVワクチン接種も推奨されている。感染を予防することでがんにならずに済むし、パートナーへ感染させることも防げるためだ。
性感染症「尖圭コンジローマ」とは?
「尖圭コンジローマ」とは、男性の陰茎・陰嚢、女性の陰唇・腟など性器周囲、肛門周囲に鶏冠(とさか)状の"イボ"ができる病気で、性感染症のうち約10%を占める。痛みはなく、あっても軽いかゆみ程度だが、性器周囲にできるのでかなり気になる。
治療は、塗り薬(イミキモドクリーム)と外科的治療とがあり、個々に選択する。塗り薬で治るならいいじゃないか、と思うかもしれないが、塗り方がとてもややこしい薬である。1日置きに、寝る前に塗り、翌朝石けんで洗い流すという、継続するにはかなり難易度の高い治療である。しかもこれを約2か月継続しなければならないという。
塗り薬で完治しない場合や、イボが大きい場合などは外科的治療を要する。患部を切除する方法や、レーザーで焼灼する方法などがあるが、いずれもウイルスを完全に消滅させることができるわけではない。
しかも、それだけ治療に手間をかけても切除後の再発率は25%、4人に1人は3か月以内に再発してしまうそうだ。この再発率の高さが尖圭コンジローマの厄介なところである。
また、産道感染によって赤ちゃんの喉にイボができる再発性呼吸器乳頭腫症を発症することがあるため、出産時に腟内に尖圭コンジローマが多発している場合は、感染予防のために帝王切開を選択することもある。このように延々と治療をしたり、日々イボを気にしたりしながら生活するのは、かなりQOLを下げることになる。
次の記事「HPVワクチン接種で子宮頸がん発症リスクは約70%下げられる/堀江貴文「健康の結論」(5)」はこちら。