超・長寿時代の日本を生き抜くために最も重要な資産は「健康」です。複雑な社会をサバイブできるメンタル管理、ワクチン接種で予防できるがんのことなど、堀江貴文氏が医師に聞いた「ホンネ情報」をお届けします。高パフォーマンスで人生100年を生きるためのホリエモン流「ライフスタイル革命論」です。
※この記事は『健康の結論』(堀江貴文/KADOKAWA)からの抜粋です。
前の記事「男性にこそ知ってほしい「HPV予防」と厄介な尖圭コンジローマ/堀江貴文「健康の結論」(4)」はこちら。
「アメリカなどでは男性もHPVを予防する。」
感染率が高いにもかかわらず、困難な検査方法
厄介なHPV(ヒトパピローマウイルスHuman papilloma virus、略してHPV。女性の子宮頸がんの原因となるウイルス)だが、感染しているかどうかはどうやって調べたらよいのだろうか。
特に症状は出ていないが感染の有無を調べたいという場合、HPV検査は自費で、病院によって異なるが2万円弱かかる。
HPV検査は血液検査や尿検査でおこなうことはできず、感染部位をぬぐう必要がある。そのため陰部の検査は陰性でも、咽頭を検査したら陽性という可能性がありうる。なかでも男性のHPV検査は、陰茎全体を調べるのは困難であるなどの理由から検査自体の信憑性が乏しいため、泌尿器科でさえも一般的にはおこなっていない。現在一部の機関で、自己採取した検体を郵送することによる検査は可能だ。
もしもあなたがすでに大人で、今後新たなHPV感染もないと考えるなら(つまり、他の相手と性交渉をしないつもりならば)、一般に男性は今すぐに何かをする必要はないと言える。女性は、陰性でも陽性でも、子宮頸がん検診を定期的に受けてほしい。
僕もHPVワクチンを接種している
それでも僕は、少し前にHPVを予防するワクチン「ガーダシル」を接種した。半年で3回に分けて接種し、6万円(一般に3回で約5~6万円)ほどかかった。
蔓延しているウイルスなのに、感染の有無を調べるハードルが高い。しかも残念ながら現在、HPVを完全に排除する薬はない。それならば、感染の有無にかかわらずワクチンを接種したほうがよい、という合理的な判断からだ。
現在、日本で認可されているHPVワクチンは、「サーバリックス」と「ガーダシル」の2種類である。サーバリックスは主に子宮頸がんを引き起こす16、18型の感染を予防し(HPV2価)、ガーダシルはそれに加えて尖圭コンジローマを引き起こす6、11型も予防する(HPV4価)。このどちらかのワクチンで子宮頸がんを起こすウイルスは約70%が予防できるという。
一人の人がHPV6、11、16、18型すべてにすでに感染している可能性は極めて低いため、ワクチンを接種することで多少なりとも効果はあると考えて、検査せずにワクチン接種するほうが合理的ではある。
しかしワクチン接種してはいるが、すでに感染しているかもしれない、という可能性は頭の片隅に置いておく必要がある。
「年間約1万人の女性たちが子宮頸がんになる。」
"発症リスクを約70%下げられる"というベネフィット
合理的に考えれば、接種しておきたいHPVワクチンだが、日本では副反応問題により2013年6月以降、積極的接種勧奨が差し止められた。現在、国内の15学術団体がHPVワクチンの安全性、有効性を認めて勧奨再開を求める声明を発表しているにもかかわらず、厚生労働省は依然として体制を変えていない。しかし、ワクチン自体は定期予防接種の対象であることから、自治体によっては対象年齢であれば公費の助成があり、無料で受けられる。
大阪における各世代の子宮頸がん罹患リスクを予測した研究によると、HPVワクチン接種率が約70%だった1994~1999年生まれの群と、接種率が約1%に下がった2000~2003年生まれの群との子宮頸がん罹患リスクはそれぞれ0.56~0.70、0.98~1.0と、HPVワクチンの積極的勧奨中止によりワクチン導入以前の水準に戻ってしまったことが示されている。
一方で、勧奨中止以前にHPVワクチンを接種した世代が20歳を迎え、子宮頸がん検査を受けるようになり、HPVワクチン接種により中~高度異形成(子宮頸がんの前がん病変)の罹患率が69%減少した、という、日本でのHPVワクチンの有効性を示すデータも出ている。
がんから身を守る手段があるにもかかわらず、その推奨が控えられているのはもどかしいが、他のことでも国や社会が守ってくれるわけではないのが現実である。
僕は、国によるワクチンの推奨が再開されるべきだと考えるが、それを待っていてはいつになるか分からない。最終的には自分の身は自分で守るしかないのだから、「HPVワクチン接種により子宮頸がん発症リスクを約70%下げられる」という事実をベネフィットと理解する人は、自費だとしても接種を検討したほうがよい。
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