「食欲がない」「胃がもたれる」「胃がキリキリと痛む」......誰もが一度ならず経験があるのではないでしょうか。胃の調子は健康のバロメーター。不調であれば、「食べた物が悪かった?」「それともストレスが大き過ぎた?」と考え、食べる量を控えるなどして、胃の健康を保とうとします。なぜ、胃の調子は悪くなってしまうのでしょう。しょっちゅう起こる胃痛や胸やけから、胃食道逆流症、胃潰瘍や胃がんまで、兵庫医科大学病院副病院長の三輪洋人先生にお聞きしました。
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勇気を出して早めの検査を
胃の不調が続けば、「胃に穴が開いたのでは」「胃がんだったらどうしよう」という心配もあるでしょう。中には「検査で悪いものが見つかるのが恐い」という不安から、検査を避けたいと考える人もいるのではないでしょうか。
興味深いことに、胃の健康に不安を抱えている人が検査を受けた場合にがんが見つかる割合と、不安のない人にがんが見つかる割合は、同じなのだそうです。
「ある調査では、胃の不調を訴えた人が内視鏡検査を受けた場合、胃がん、もしくは食道がんが見つかった人は1000人に3人、0.3パーセントと出ました。
別の調査では、人間ドックを受けた人のうち、胃がん、もしくは食道がんが見つかる確率を調べました。人間ドックは、体調不良がなくても健康な人が念のために受ける検査ですね。その場合でも胃がん、もしくは食道がんの人は、1000人に3人、0.3パーセントだったのです」と三輪先生。
つまり、胃に不調を感じていても、いなくても、1000人中3人は、胃がんか、食道がんにかかっていて、胃の不調を感じていたとしても、997人は胃がんでも、食道がんでもないのです。いずれ検査を受けるのであれば、勇気を出して、早めに検査を受けたいですね。
早期発見なら、治療が簡単というメリット
「かつては、胃がんや胃潰瘍はかなり大きくなるまで見つかりませんでした。胃の一番内側の粘膜が傷つき、筋層などいくつかの組織を破り、さらに一番外側の漿膜(しょうまく)という膜に炎症ができるとかなり痛いのですが、この時点で初めて医療機関で受診して、胃潰瘍や胃がんに気づくという人が多かったのです。そこまで進行していると治療も大変で、患者の負担も大きかった。病気の発見が、即、胃の摘出になり、その後の生活も制限されることが多かったのです。しかし、これは昔の話です」(三輪先生)
現在は、内視鏡検査の進歩や定期的な健康診断の実施によって、早期に病気が見つかることが増えてきました。三輪先生は、「初期の胃がんを自覚する人はいません。だから内視鏡検査が大事なのです」と言います。
「不調があっても、なくても、検査を受けることが大事です。胃の痛みを感じて不安になったら、それはいいきっかけで、神様のお告げだと思って内視鏡検査を受けましょう。もし問題が見つかっても小さなうちであれば治療は簡単で、選択肢も多く、短期間に治りやすいものなのですから」(三輪先生)
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取材・文/三村路子