「食欲がない」「胃がもたれる」「胃がキリキリと痛む」......誰もが一度ならず経験があるのではないでしょうか。胃の調子は健康のバロメーター。不調であれば、「食べた物が悪かった?」「それともストレスが大き過ぎた?」と考え、食べる量を控えるなどして、胃の健康を保とうとします。なぜ、胃の調子は悪くなってしまうのでしょう。しょっちゅう起こる胃痛や胸やけから、胃食道逆流症、胃潰瘍や胃がんまで、兵庫医科大学病院副病院長の三輪洋人先生にお聞きしました。
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病気の不安がさらなる胃の不調に
胃には、主に3つの機能があることがわかりました。
1.胃酸を出す
2.動く
3.感じる
「胃は、自律神経のもとで働いています。自律神経は恐怖や不安、喜びといった情動でバランスが変化します。極端な情動の揺れ動きによって自律神経のバランスが乱れると、胃の機能も崩れます。例えば、胃酸が胃の中にあるのは当たり前なのですが、ストレスによって自律神経の交感神経が優位になれば、脳は信号を増幅して受け取ってしまい、『胃が痛い』『不快だ』と感じるようになります。そのように大げさに感じてしまうことが、さらに不安やストレスを生み、胃の調子はますます悪化します」と三輪先生。
胃の不調は、ストレスが大いに影響するようです。そして実際に、胃の機能は低下しているのです。しかし、長い間、そういった悩みは「気のせいでは?」と片付けられ、軽く扱われがちでした。
内視鏡検査では見つからない機能性ディスペプシア
「胃の不調を訴えた患者の食道や胃を、内視鏡で見てみると、炎症がなく、色もきれいで、みずみずしい場合がほとんどです。では炎症がなければ問題がないかといえば、そうではありません。形の上で異常はないのだけれど、腹部に不調のある状態をまとめて、医学用語で『ディスペプシア』と言っていました。やがて、胃の『動き』や『感じる』機能が崩れていることがわかり、『機能性ディスペプシア』と病気として扱うようになりました」
機能性ディスペプシアの症状例
●胃がキリキリと痛む
●胃がしくしくと痛む
●食事のあと、毎回、胃がむかむかする
●胃がもたれる
●少ししか食べてないのに満腹感を感じてしまう
●げっぷがたくさん出る
●お腹が張った感じで苦しい
●気持ちが悪い
●食欲不振
●気分が落ち込む。憂鬱
慢性的に胃の不調を感じているのにもかかわらず、かつて病院で「異常はありません」と診断されたり、炎症が見つからないのに「慢性胃炎」と診断されたり、また「気のせい」「気の持ちよう」とされて治療の対象にならなかったり、「神経性胃炎」と言われながらも特効薬がなかったような胃の不調は「機能性ディスペプシア」の可能性があります。
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取材・文/三村路子