ひとたび痛くなると生活の質がガクンと落ちてしまう腰。慢性でも急性でも、腰痛で悩んでいる人は結構多いですよね。では「腰痛になりやすい人」にとってかかわりが深い、骨盤にある関節をあなたはご存知ですか?その関節とは「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」。
今回は「仙腸関節」を中心に、腰痛タイプや腰痛を改善するためのセルフケアについて、さかいクリニックグループ代表である酒井慎太郎先生に伺いました。
前の記事「かがむと痛い?反ると痛い? 痛む場所でわかる腰の病気/自分で治す腰痛(2)」はこちら。
"前かがみ"と"後に反る"2つのタイプに合った体操
腰痛と関係が深い骨盤は、複数の骨で形成されています。「仙骨」を中心に左右に「腸骨」があり、そのつなぎ目がもっとも重要な「仙腸関節」です。腰痛の原因の多くは「仙腸関節」にあります。仙腸関節の働きをスムーズに改善できれば、腰痛が軽減することが多いです。それには自分の腰痛タイプに合った体操を毎日行いましょう。おすすめは、テニスボールを使った基本の体操である「仙腸関節体操」。どちらの腰痛タイプにも適応します。
「腰痛は医療機関で飲み薬や注射、マッサージなどの施術を受けても改善しないことがあります。軽症のうちに、『自分で治す』という姿勢が大切です」(酒井先生)
日常の動作や悪い姿勢を見直し、腰痛改善体操をコツコツ行うことが大事です。ただし、これから紹介する体操を行って腰に痛みが生じた場合は、無理せずに体操はやめましょう。
●仙腸関節体操 (1日1~3回、1~3分間行う)
※前かがみになると腰が痛い人、後ろに反ると腰が痛い人に適した体操です
テニスボールを使って仙腸関節を緩めることで、腰椎にかかっていた負担を和らげます。腰痛ケアの基本形。
用意するもの:テニスボールを2個つなげたもの
体操用テニスボールの作り方
1.硬式用のテニスボールを2個用意します。
2.上下左右にずれないようにぴったりつけて、ガムテープを何回か巻いて固定します。
1.尾骨を探る
お尻の割れ目上部の出っ張り部分が尾骨なので、確認できたら右手のこぶしを当てます。
2.仙腸関節に置く
1の手の上が仙腸関節。テープで留めた二つのボールを置き、位置を確認します。
3.右手を外す
尾骨に置いた手を外し、ボールの位置がずれないよう、気を付けながら横になります。
4.ボールの上に寝る
ボールを仙腸関節に当て、ずれないようあおむけに寝ます。その姿勢で1~3分間保ちます。
<やり方のコツ>
畳やフローリングなど硬い床の上で行い、ボールがずれないようにする。
●上体ひねり体操(1日1~3回、左右30秒ずつ行う)
※前かがみになると腰が痛い人、後ろに反ると腰が痛い人に適した体操です
上体をひねると背骨と骨盤の連携がスムーズになります。仙腸関節の回復を目指し、体のゆがみを正常に戻します。
1.横向きになる
痛みがある方の腰を上にして横向きに寝ます。上の足を90度に曲げ、下の手でひざを押さえます。
2.上半身を反対側にひねる
上の足のひざから下を床につけて、上体を反対側にひねりながら、上の腕を伸ばし30秒間、姿勢を維持します。
<やり方のコツ>
ひざが浮かないよう、手で押さえながら体をひねるようにする。
●オットセイ体操 (1日1~3回、1~3分間行う)
※前かがみになると腰が痛い人に適した体操です
腰を反らすことで筋肉の柔軟性を高め、背中のこわばりを解消します。特に椎間板ヘルニアに効果があります。
1.うつぶせの姿勢に
床の上にうつぶせに寝て、手のひらが顔の横にくるように。両ひじは曲げて床につけます。
2.上体を反らす
腕を伸ばし上体をへそが床から離れるぐらい反らし、1~3分間そのままの状態で維持。
立ちながら行ってもOK
1.壁に手をつく
うつぶせで反るのがつらい人は、壁に両手をつき、ひじを曲げてまっすぐに立ちます。
2.上体を反らす
ひじを曲げて壁を押しながらゆっくり上体を反らし、1~3分間そのままの状態を維持。
<やり方のコツ>
慣れてきたら、反る角度を少しずつ上げていってもよい。
●胸腰椎(きょうようつい)体操 (1日1~3回、1~3分間行う)
※前かがみになると腰が痛い人に適した体操です
胸椎と腰椎の境目にボールを当てることで、曲がった背骨を伸ばし、背骨本来のカーブを取り戻します。
用意するもの:テニスボールを2個つなげたもの
1.背中に当てる
上のように胸椎と腰椎の境目(腰椎の一番上の骨のあたり)の位置で、左右中央になるようにボールを当てます。
2.あおむけに寝る
ボールが1の位置からずれないようにして、あおむけに寝ます。両手は頭の上に置き、1~3分間保ちます。
<やり方のコツ>
背骨周辺の筋肉がほぐれるよう意識を向けながら行う。
●ねこ体操 (1日1~3回、1~3分間行う)
※後ろに反ると腰が痛い人に適した体操です
ねこのように腰を丸めることで、狭まった脊柱管のスペースを広げます。特に脊柱管狭窄症に効果的。
上体を倒し腰を丸める
正座の姿勢から、上体と手を前へ倒して腰を深く丸めます。背中の筋肉が前に引っ張られるのを感じながら1~3分間保ちます。
<やり方のコツ>
しっかりと上体を前に倒し、腰を深く丸めることを意識する。
●ジャングルジム体操 (1日1~3回、10~20秒間行う)
※後ろに反ると腰が痛い人に適した体操です
重力を利用して腰痛を緩和します。運動する施設などで、イラストのような器具を使って行いましょう。公園のジャングルジムでも行えます。
棒につかまる
両手で棒をしっかりつかみ、下の段の棒に両足をかけます。お尻に体重をかけてゆっくり腰を落とします。
※公園のジャングルジムでも
公園のジャングルジムに1~2段昇り両手で棒をつかみます。
<やり方のコツ>
足をすべらせないように注意しながら、腰をしっかりと丸める。
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取材・文/松澤ゆかり・山川寿美恵 イラスト/やまだやすこ
酒井慎太郎(さかい・しんたろう)先生
さかいクリニックグループ代表。千葉ロッテマリーンズオフィシャルメディカルアドバイザー。柔道整復師。腰痛専門病院などを経て現職。ラジオ、テレビ多数出演。著書『脊柱管狭窄症は自分で治せる!』(Gakken)など50冊。