ひとたび痛くなると生活の質がガクンと落ちてしまう腰。慢性でも急性でも、腰痛で悩んでいる人は結構多いですよね。では「腰痛になりやすい人」にとってかかわりが深い、骨盤にある関節をあなたはご存知ですか?その関節とは「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」。
今回は「仙腸関節」を中心に、腰痛タイプや腰痛を改善するためのセルフケアについて、さかいクリニックグループ代表である酒井慎太郎先生に伺いました。
前の記事「腰痛改善のカギは骨盤にある関節にあり!? 腰痛の原因とタイプをチェック/自分で治す腰痛(1)」はこちら。
前かがみの姿勢はヘルニアの原因に
あなたの腰痛タイプは、「前かがみになると痛い」タイプでしたか?それとも「後ろに反ると痛い」タイプでしたか? (チェックシートはこちら)
一つ目の「前かがみになると痛い」タイプは、例えば前かがみでの家事、車の運転、背中を丸めての読書やパソコン作業など、前かがみの姿勢を長時間繰り返したことが原因で起こる腰痛タイプです。
「このタイプの人は、症状の軽い『筋・筋膜性腰痛(きん・きんまくせいようつう)』から順に、『椎間板症(ついかんばんしょう)』『椎間板ヘルニア』とたどりながら、腰痛が次第に悪化していくことが多いようです」(酒井先生)
まず、前かがみの動作を繰り返すことによって、腰の筋肉疲労である「筋・筋膜性腰痛」が起きます。仙腸関節の動きが悪くなったり、動かなくなったりするのです。仙腸関節が動きにくいため、前に傾いた体の重心を後ろに戻す動作が困難になり、腰椎も前に曲がった状態に。そうなると腰椎の骨と骨の間にある椎間板も前が押しつぶされます。これが「椎間板症」で、強い腰の痛みなどが生じます。
さらに悪化すると、椎間板の内部が外にはみ出た「椎間板ヘルニア」へと進行することもあるのです。痛みをそのままにしておくと、どんどん重い症状に移行してきます。早めに改善を目指すことが大事です。
後ろに反ると痛い腰痛は脊柱管狭窄症の怖れが
二つ目の腰痛タイプである「後ろに反ると痛い」は、「前かがみになると痛い」の腰痛をそのまま放置していると起こる症状です。
「今度は腰椎の前側だけでなく、背中側にも不調が現われます。重心が後ろに偏り、腰椎が後ろ側に曲がってしまうのです。そのため、反り返る動作をすると、腰椎がますます圧迫されて痛みます」(酒井先生)
腰椎の背中側の突起した骨が疲労骨折を起こす「老人性腰椎分離症(ろうじんせいようついぶんりしょう)・すべり症」を経て、50歳代から増えるのが「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」です。変形した腰椎によって脊柱管が狭められて、さまざまな不調が生じます。
ぎっくり腰は、どちらのタイプにも入らない
ぎっくり腰は、腰に急激な痛みを感じる症状で、急性腰痛ともいいます。どの腰痛疾患でも、急激に痛みが出たときには、ぎっくり腰と呼ばれるのです。一般的なのは、重い荷物を持ち上げたときに、腰に激痛が走るパターン。腰の筋肉への負担が限界に達し、筋肉が一気に収縮することが原因で起こります。
●ぎっくり腰を改善する方法
・痛くない姿勢で腰を温めて2、3日安静に過ごす。
・3、4日後から痛みがあっても家事や仕事を再開する。
・普段から腰の筋肉に過度な負担をかけない。
次の記事「腰痛タイプに合わせて実践! テニスボールを使って簡単体操/自分で治す腰痛(3)」はこちら。
取材・文/松澤ゆかり・山川寿美恵 イラスト/やまだやすこ
酒井慎太郎(さかい・しんたろう)先生
さかいクリニックグループ代表。千葉ロッテマリーンズオフィシャルメディカルアドバイザー。柔道整復師。腰痛専門病院などを経て現職。ラジオ、テレビ多数出演。著書『脊柱管狭窄症は自分で治せる!』(Gakken)など50冊。