「夜間高血圧」ってご存じですか? 就寝中に血圧が上がるもので、脳卒中の死亡率は約4倍になる、という研究もあるんです。9月に「夜間高血圧」に関するセミナーを実施したオムロン ヘルスケア(株)によると、日本の高血圧者は推計4300万人。そのうち、適切な治療を受けている人は3割以下。中でも注意したいのが、就寝中の血圧上昇としています。そこで帝京大学医学部 衛生学公衆衛生学講座 准教授の浅山 敬(あさやま・けい)先生に「夜間高血圧」について教えていただきました。
高血圧にはさまざまなタイプがありますが、特に気を付けたいのが「仮面高血圧」だと、浅山敬先生。
「病院で血圧を測ると正常値にもかかわらず、家庭で測ると数値が高くなるのが仮面高血圧です。仮面高血圧の場合、循環器系の病気のリスクは2倍以上に及びます」。
中でも注意が必要なのが、就寝中に血圧が上がる夜間高血圧です。
「夜間の血圧レベルは、通常、正常であれば昼間よりも10~20%低くなります。就寝中に血圧が上昇する人は、脳卒中の死亡率が高くなるという調査結果(下記参照)もあります」。
では、夜間高血圧はどうしたら確認できるのでしょう?
「多くの患者さんは、起床後と就寝前にしっかりと家庭血圧を測定(※)することで、高血圧の評価や治療を十分行えます。24時間血圧を測る自由行動下血圧という測定法もありますが、こちらは医師の判断のもと行うもの。正確な夜間血圧をどうしても知りたいという方は、かかりつけ医に相談してみるといいでしょう」。
夜間高血圧の一因には、睡眠時無呼吸症候群や脳卒中の後遺症、抑うつなどの病気が隠れていることもあると浅山先生。
また、降圧治療が不十分なままの状態でいることで夜間血圧が上昇することもあるといいます。
原因となる病気を適切に管理するとともに、外来血圧と家庭血圧の定期的な測定を組み合わせることで、夜間高血圧を見逃さないように心がけたいですね。
※家庭血圧を測る際は、上腕血圧計を使用。朝は、起床後1時間以内(朝食前、服薬前)、夜は就寝直前に各2回測定。安定した値(測定値の差が5mmHgを目安)を示した2回の平均値を血圧値とします。
●「仮面高血圧」は3タイプ
早朝に血圧が上昇する「早朝高血圧」
日中に血圧が上昇する「昼間高血圧」
夜間に血圧が上昇する「夜間高血圧」
診察室で測る血圧は正常値ですが、家庭で測ったり、24時間自由行動下血圧では正常値にならない状態をいいます。血圧が上昇する時間帯によって、上の3タイプに分かれます。
●就寝中に血圧が高いと、脳卒中の死亡率は約4倍!!
夜間降圧度と脳卒中死亡率の関連:大迫研究
上のグラフ中のA~Dのタイプは、下表「夜間の血圧レベル」A~Dのことです。
※ Ohkubo T et al.Am J Hypertens.1997;10:1201
●夜間の血圧レベル
カッコ内の数字は、日中の血圧と比較した夜間の血圧の下がり具合。A「過度に下がる」C「多少下がる」もリスクありと考えられます。
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取材・文/オフィス・エム(寳田真由美) イラスト/坂木浩子