厚生労働省の調査(「平成26年患者調査の概况」)では、継続的な治療を受けていると推測される高血圧患者数は1010万8千人でした。
「高血圧は遺伝、体質だから治らない」と諦めてはいけません。特に、血圧は高さのみならず、急激な乱高下も要注意とされています。どんなことに注意したらいいのか、気にしておきたいキーワードについて、東京女子医科大学高血圧・内分泌内科主任教授で、日本高血圧学会理事の市原敦弘先生に教えてもらいました。今回はその2回目です。
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健康診断で血圧を測定すると何も異常が見つからなくても、血圧は行動、環境、感情などで大きく変化しています。食事や入浴のときに血圧は上がりますが、その上昇幅が急激な場合や、就寝時には下がるはずの血圧が、下がりきらないという場合は要注意。「それは『乱れ血圧』のサインかもしれない」と市原先生は警鐘を鳴らします。
「乱れ血圧」、つまり血圧の乱高下は血管を傷めることになり、命に関わる病気にもつながります。「高血圧ではなく健康だ」と本人が思い込んでいるため、体の異変に気づきにくいとも指摘されています。
これは年齢とともに血管の弾力性が失われて血流が悪くなる、自律神経の働きが低下して、血管の収縮と拡張の調整がうまくできなくなるなどの要因で高血圧が引き起こされるからです。脳の血液量を一定に保つ機能が低下して、脳に血液を送ろうとして血圧を高くする必要が生じることも加齢に伴う高血圧に関係しています。糖尿病や腎臓病の人は、腎臓の機能が衰えて血圧を調整するホルモンの分泌が低下してしまうので、高血圧になりやすいのです。
また、睡眠の質の低下から、血圧変動のリズムが乱れ、夜間になっても血圧が低下しない「夜間高血圧」という高血圧もあります。
以上のように加齢などで血圧を安定させる機能が衰えてくると「乱れ血圧」を引き起こしやすくなります。これに早く気付いて改善しないと、高血圧が悪化してしまうのです。
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取材・文/宇山恵子
市原敦弘(いちはら・あつひろ)先生
東京女子医科大学高血圧・内分泌内科主任教授。日本高血圧学会理事。慶應義塾大学医学部卒。ホルモン異常や腎機能など高血圧の根本原因を突き止め治療する専門家として年間5000人以上を診る。