ペットを飼うと「介護や死亡のリスクが半減」。その理由を国立環境研所の研究員が解説

国立環境研究所などの調査によると、犬を飼っている人は飼ったことがない人に比べ、介護や死亡が発生するリスクが半減することが分かりました。犬と暮らすことによる毎日の生活習慣がリスクを下げる秘訣のようです。今回は、国立環境研究所 主任研究員の谷口 優(たにぐち・ゆう)さんに「ペットとの触れ合いは、体の健康状態にどう影響する?」についてお聞きしました。

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「ペットとの触れ合いは、体の健康状態にどう影響するのだろう?」という疑問から始まったこの研究調査。

「年齢とともに心身が衰えた状態になる"フレイル"や要介護状態、死亡への影響を調査した結果、犬の飼育による健康効果が分かりました」と、谷口優さん。


どんな研究なの?
研究対象は、2016年時点で介護認定を受けていない東京都大田区に住む65~84歳の男女約1万1000人。ペットの飼育を含む生活環境や既往歴などの健康状態を調べ、18年にフレイルの発症リスクを調査。さらに20年に要介護や死亡の有無を追跡しています。ペットを飼うと「介護や死亡のリスクが半減」。その理由を国立環境研所の研究員が解説 2304_P082_01.jpg

上は、調査開始時の犬・猫の飼育経験の有無。そのうち、調査開始時に犬を飼っている人は9%、過去に飼ったことのある人は24%でした。

3年半後の要介護・死亡のリスクは?
犬や猫の飼育状況ごとに介護や死亡が発生するリスクを分析したところ、犬を飼っている人は、飼ったことがない人に比べてリスクが0.54倍とほぼ半減。猫を飼っている人と飼っていない人との間では、介護や死亡のリスクの差はほとんど見られませんでした。

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リスク減の理由は「犬の飼育+運動習慣」
犬を飼っている人の中でも、散歩など定期的な運動習慣がある人の介護や死亡のリスクは、飼っていない人と比べて0.44倍。犬の世話などの日常的な身体活動により健康リスクが大きく減ることが分かりました。下記の通り、犬の散歩は中強度の身体活動になります。

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※メッツは、体を動かしたときに感じるきつさ(身体活動の強さ)を表す指数。座ってラクにする安静時を1とし、それと比較して何倍のエネルギーを消費するかを示しています。


具体的には、過去に一度も犬を飼ったことがない人がフレイルの状態になるリスクを1とすると、犬を飼っている人のリスクは0.81倍。

自立喪失(介護が必要な状態や死亡)の状態になるリスクについては半減という結果に。

さらに、犬を飼っている人の中で運動習慣の有無を調べた結果では、犬を飼っていても運動習慣のない人の自立喪失リスクは0.85に対し、運動習慣がある人のリスクは0.44と大きく低下。

つまり、犬の散歩などの運動習慣が健康に貢献しているということです。

「犬の散歩は、身体活動としては歩くことと同程度ですが、"毎日行う" "1日数回行う"といった頻度の多さがポイントのようです」

今回の結果は、犬を飼っていない人には関係ないということではありません。

「決まった時間に散歩に行く」「歩数計を持って歩く」など、毎日の運動習慣が、健康維持に役立つことでしょう。

取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子

 

<教えてくれた人>

国立環境研究所 主任研究員
谷口 優(たにぐち・ゆう)さん

国立研究開発法人国立環境研究所環境リスク・健康領域(環境疫学研究室)所属。健康長寿社会の実現を目標としたライフコース研究に広く取り組んでいる。

この記事は『毎日が発見』2023年4月号に掲載の情報です。
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